2017/03/23

抗PD-L1 抗体バベンシオ(BAVENCIO、一般名:avelumab)を転移性メルケル細胞癌治療薬としてFDAが承認

BAVENCIO静注用製剤20 mg/mL のBLA 申請はファイザー と共同開発する独メルク(Merck KGaA) の米国バイオ医薬品事業部門EMD Serono が2016年9 月に提出していた。転移性メルケル細胞癌(mMCC)は悪性で進行が早い皮膚癌で、1 年以上生存する患者は半数以下、5 年以上の生存率は20%以下とされている。希少病指定の成人および12 歳以上のmMCC治療薬として、加速承認制度並びにBreakthrough Therapy(画期的治療)指定の下で優先審査により承認された。審査期間は優先審査規定の6 ヵ月であった。
安全性と有効性はJAVELIN Merkel 200試験で証明された。オープンラベル、シングルアーム、多施設試験で、遠隔転移病変の治療用として投与された化学療法中、あるいは治療後に進行した病理組織から、mMCCと確定診断された患者88名を対象に実施された。登録患者の65%が前治療歴1回、35%が2ないし3回の前治療歴を有していた。全奏効率(ORR)は33%(95%CI; 23.3, 43.8%)で、うち11%の患者が完全奏効(CR)(95%CI; 6.6, 19.9%)、および22%の患者が部分奏効(PR) (95%CI; 13.5, 31.7%)を示した。奏効患者の86%が6ヵ月以上持続(n=25)、45%が12 ヵ月持続し(n=13)、奏効期間(DoR)の範囲は2.8 ~23.3 ヵ月。
(参考)
抗PD-1受容体抗体製品の2016年売上高はオプジーボ(BMS)37億㌦(4000億円)、キートルーダ(MSD)14億㌦だった。初回承認の悪性黒色腫ではキートルーダ(2014年9月)がオプジーボ(2014年12月)に先行した。しかし、肺がんの効能追加では逆転してオプジーボ(2015年3月)がキートルーダ(2015年10月)に半年あまり先行し、実質発売2年目の売上高で大差をつけた。PD-1受容体のリガンドであるPD-L1に対する抗体として開発されたテセントリク(ロシュ)は昨年(2016年)5月に膀胱がん効能で承認され、10月には肺がん効能が追加されたが2016年売上高は1.5億㌦にとどまった。肺がん効能が本格的に寄与する2017年の売上拡大が期待される。ファイザー/独メルクのBAVENCIOもテセントリクと同様に抗PD-L1抗体である。2月に尿路上皮癌の効能追加を申請しているが肺がんではまだフェーズIII段階である。アストラゼネカが開発中の抗PD-L1抗体ダーバルマブ(durvalumab)は昨年(2016年)12月に膀胱がん効能でBLA申請を提出しているが、肺がんの臨床試験はやり直しとなる模様。抗PD-1受容体抗体のオプジーボとキートルーダを追撃する抗PD-L1抗体の新製品がどこまで競合できるか注目される。

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