3 月8 日、最近FDA の迅速プログラムの1 つ、加速承認の承認条件である臨床上のベネフィットの確認試験に失敗して、抗PD-1/PD-L1 抗体薬のOPDIVO、IMFINZI、KEYTRUDAが揃ってそれぞれ一つの承認効能を取り下げた。重篤な疾患の治療を目指して、開発の迅速化を図るために臨床試験の有効性評価にサロゲートエンドポイント(代替評価項目)を使用して、試験規模、試験期間を縮小して、早期の承認取得を目指す開発手順である。
1992 年にFDA は加速承認規則を制定した。これらの規則により、アンメットメディカルニーズを満たす深刻な疾病の治療藥を、代替評価項目に基づいて迅速に承認する必要があり、これにより、FDA はこれらの薬剤をより迅速に承認することができるようになった。2012 年、米国議会はFDA 安全・イノベーション法(FDASIA)を可決した。 FDASIA の901条には、連邦食品医薬品化粧品法(FD&C 法)を改正し、ファストトラック指定された医薬品の審査を迅速化し、加速承認(Accelerated Approval)における評価項目等を明確化した。また、加速承認及びファストトラックのプロセスに関するドラフトガイダンスの作成を指示している。902条にはBreakthrough Therapy 指定の創設なども組み込まれた。
2020 年12 月31 日現在、FDA は合計253 件を指定しており、領域別の内訳としては、癌領域の指定が165 件と65%を占め、その他の領域が88 件を取得している。中でも2020 年はこれまでの年間指定を大幅に凌駕し合計45 件、うち癌領域が41 件を占める異常とも思える指定件数を増加させた。2004 年以前のその他の領域の主なものは抗HIV 薬が殆どで、その時々の感染症の歴史を示している。
完全承認への移行(Convert)の有無、ならびに臨床のベネフィットを確認できずに取り下げた事例を調査した。時系列でみると2010 年以前に承認された品目の多くは既に完全承認に移行している割合が高い一方、2020 年から2016 年に承認された品目では、確認試験結果がまだ得られていない事例が多い。2010 年以前に承認された品目のうち、確認試験が未だ終了しなのか詳細は不明であるが、放置されているとすれば承認後の管理上の問題も今後浮上する可能性がある。2020 年12月末までに移行が成功した件数は125 件、未移行が112 件も残されている。
承認年.別に完全承認への移行期間(月)を2010 年以降、現在までの傾向を見ると、2010 年の97 カ月(約8年)と長期であるが、2012 年以降は短縮傾向にあり、2019 年には20 カ月を切る程に短縮されてきている。
本制度が1992年から開始されてきたが、現在までに効能の承認取り下げ件数は18 件である。直近の取り下げは、上記のように抗PD-1/PD-L1 抗体薬のOPDIVOの小細胞肺癌、IMFINZIの尿路上皮癌(膀胱癌)、KEYTRUDA の小細胞肺癌であるが、それ以前の癌領域の取り下げは、2011年のAVASTIN のHER2 陰性乳癌である。取り下げまでの期間は最長160 カ月を超える例もある。本制度を推進してきた前CDER センター長Dr. Woodcock がFDA 長官代理に昇格したことで、Follow-up の評判の悪い本制度の見直しが予想される。