2021/09/30

Merck、Acceleronを115億$で買収、肺動脈性肺高血圧症等心血管系パイプライン補完強化

9月30日、Merck/MSDと、上場バイオ製薬企業Acceleron Pharma Inc. (Acceleron)は、Merck子会社が、Acceleronの株式1株当り180$、総額約115億$の現金での買収に合意したと発表した。右表は2021年における >$1bnの買収事例を示す。2021年では最高額になる。

1. Acceleron:

2003年創設の、細胞の成長、分化、修復の調節過程において中心的な役割を果たすことが知られているtransforming成長因子(TGF) βsuper familyのタンパク質のPowerの利用に焦点を当てている。Acceleronのリード開発候補品のsotaterceptは、進行性で生命を脅かす血管障害である肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者の短期的および/または長期的な臨床転帰を改善する可能性のある、新たな作用機序を有している。 sotaterceptは、PAHの治療薬として現在の標準療法への上乗せ投与による第3相試験が進行中である。Acceleronのポートフォリオには、sotaterceptに加えて、特定の稀な血液疾患である貧血治療薬として、米国、EU、カナダ、豪州で承認されたfirst-in-classの赤血球成熟組換え融合タンパク質REBLOZYL (luspatercept-aamt)がある。 REBLOZYLは、2008年にCelgeneと提携契約を締結したが、CelgeneがBristol Myers Squibb((BMS)に買収され、現在はBMSと提携し開発および商品化されている。

2. Merck CEO兼社長Rob Davis,氏のコメント:

「戦略的な事業開発は、持続可能な成長を推進し、画期的な科学技術によりパイプラインをさらに強化し、バランスを採ることを目指すMerckにとって最優先事項である。Acceleronの革新的な研究は、成長を続ける心血管ポートフォリオとパイプラインを補完ならびに強化し、Merckの心血管疾患における誇り高いレガシーの上に潜在的な可能性を秘めた、新規な開発後期候補品を創出した。」と述べている。

3. Acceleron CEO兼社長Habib Dable氏のコメント:

「Merckとの今回の合意は、TGF-β super-familyの生物学における当社の深い科学的専門知識を活用し、患者の人生を変えられる治療薬を提供するという揺るぎない献身的努力によって推進された。Acceleronの研究者による数十年にわたる研究の集大成を表している。Merckは、業界をリードする臨床開発ならびに商業面での能力を活用して、患者のベネフィットのために心肺疾患にインパクトを与えるために協力することで、sotaterceptの可能性を推進するのに適した立場にあると信じている。」と述べている。

4. 買収完了予定: 

買収契約の条件に基づいて、Merckは子会社を通じて、Acceleronの発行済み株式全てを取得するための公開買付けを開始する。公開買付けの終了は、Acceleronの発行済み全株式総数の少なくとも過半数を買い付け、適用される規制当局の承認、およびその他の慣習的な要件を含む、関連の特定条件のクリアが条件となる。公開買付けが正常に完了すると、Merckの買収子会社はAcceleronに統合され、Acceleronの残りの普通株式はキャンセルされ、公開買付けで支払われる1株当り180$を受け取る権利に変換される。取引は2021年第4四半期に完了する予定である。

5. sotatercept:

本品は、TGF-β super familyのシグナル伝達のバランスを取り戻すために提案された臨床開発段階にある逆リモデリング(reverse-remodeling)薬である。 PAHの前臨床モデルでは、sotaterceptは、この疾患の特徴である肺動脈壁と右心室に逆リモデリングを生じさせた。PAH患者を対象に、承認されたPAH特異的薬剤と組み合わせてsotaterceptを評価する第2相PULSAR試験では、肺血管の抵抗性の改善という主要評価項目を達成した。試験結果はNEJM誌に掲載されている。 sotaterceptは、PAHの特定の患者の治療薬として複数の第3相試験と、心不全の毛細血管後および前毛細血管性肺高血圧症を併発し、駆出率が保持されている患者を対象にした第2相試験がそれぞれ進行中である。逆リモデリングとは,一旦生じた心室リモデリング(心不全では心筋の構築変化)が何らかの治療により構造的,機能的に改善し,結果として左室径の縮小又は心機能の改善と心臓形状の改善(球状から偏長楕円体へ)を齎すとされる。FDAは、sotaterceptに希少病薬及びBreakthrough Therapyに指定、EC及びEMAは、PAH治療薬としてそれぞれ希少病薬品及びPRIMEスキームに指定している。

6. REBLOZYL(luspatercept-aamt):

特定の稀な血液疾患における貧血の治療薬として、米国、EU、カナダ、豪州で承認された最初で唯一の赤血球成熟剤である。REBLOZYLは現在、BMSとのグローバル提携契約の一環として開発されている。進行中の第3相試験では、骨髄異形成症候群、beta-thalassemiaおよび骨髄線維症の患者集団における貧血の治療薬としてluspaterceptを評価している。(完)

(主な出典:https://www.merck.com/news/merck-to-acquire-acceleron-pharma-inc/他)