2017/03/29

CAR-T細胞療法CTL019の承認申請をFDAが優先審査に指定

 開発したノバルティスにとっては初めてのCAR-T細胞療法の承認申請である。申請効能の「小児及び若年成人の再発/難治性(r/r)B細胞性急性リンパ性白血病(ALL)」は2014 年にFDAから画期的治療法(Breakthrough therapy, BT)指定を受けている。同様のCAR-T細胞療法として競合するKite Pharma, Inc.のKTE-C19 (axicabtagene ciloleucel)は「悪性の非ホジキンリンパ腫」を対象としてBT指定を受け、2016年1月からローリング申請を進め、2017年3月31日に最終申請を完了した。ノバルティスはこれを追い抜き、BLA申請を2 日早く提出することに成功した。
 CAR-Tはこれまでの低分子薬や生物学的製剤と異なり、個々の患者用に個別に調製する細胞療法である。患者の血液からT細胞を採取し、患者の癌細胞や特定の抗原を発現しているB細胞を死滅させる遺伝子をコードしたT細胞を創製するために in vitroで再プログラム化を行う。申請根拠となるELIANA試験 (NCT02435849)は米国、EU、カナダ、オーストラリア、および日本における25施設で実施された。CAR-T細胞インフュージョン投与後3ヵ月の時点で、患者の82%(41/50)が完全奏効または血球数の回復が一部不完全ながら完全奏効を達成した。このフェーズII段階の成果が昨年(2016年)12月の米国血液学会で報告された。組み換えT 細胞が患者の体内で活性化されることで発症する副作用として、48%の患者がグレード3又は4のサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した。しかし、事前にCRS対処法アルゴリズムの実施方法を教育しておけば、プロトコルに指定した治療法で管理可能であり、CRSによる死亡例の報告は無かった。15%の患者に神経系および精神性イベントが報告された。