CEOの報酬について
2020年5月26日
代表的なグローバル製薬企業(ロシュ、ノバルティス、ファイザー、メルク)のCEO報酬を比較表に示しました。タケダの18億円は、メルクの30億円およびファイザーの20億円に次いで3位となります。最高額のメルクCEOの報酬は2014年から2015年にかけて倍増していましたが、その後さらに4億円増加しました。背景には2014年に発売した抗がん剤キートルーダ(Keytruda)の好調があります。
メルクは2015年に9.9%だったROEを38%へと28%ポイント改善し、5年間の配当成長は年率平均5.1%、TSR(株主総利回り)は75%となりました。フレイジャーCEOの手腕が高く評価され、取締役会は定年制度を一時停止してCEOの続投を決定しています。
5年間のTSRを見ると、ロシュ(31%)、ノバルティス(31%)、およびファイザー(46%)は市場(S&P500指標)の伸び率(57%)を下回ったことから、CEO報酬は減額となりました。ただし、ファイザーとノバルティスは、途中でCEOが交代していますので、2019年は新しいCEOの報酬です。ロシュは全世界での血友病治療薬ヘムライブラの好調が起因して、ROEを3.7%ポイント改善し(直近実績42.6%)、年率2.7%の配当成長を実現しました。しかし、株価上昇率が市場を下回ったことから、CEOの報酬は減額されています。
タケダを見ると、ウェバーCEOの報酬は、2018年度までの4年間で倍増して18億円となっています。2019年度は20億円に達することも予想され、ファイザーを超えるかも知れません。ウェバーCEOは、経営の選択と集中と称してノンコア事業、優良資産などの多くを売却し、さらに国内を中心に多くの従業員を解雇することによって業績改善を図りました。しかし、ROEは0.9%へと3.0ポイント低下、配当成長率はゼロ、TSRはマイナス27%となりました。タケダの株主はシャイアー買収案件の前後に、全体として2兆円の損害を被っています。このような経営者の報酬がなぜ、二倍になっているのでしょうか。欧米企業であれば、CEO報酬の返還と解任を要求されると思われます。
現状を鑑みますと、経営者による自己利益の追求を監視するガバナンス(企業統治)が機能していません。「考える会」では、グローバル化を急ぐ一方でガバナンスの水準が追い付いていないと判断しましたので、今回、ガバナンス強化に資すべく社外取締役の候補を推薦し、株主提案権を行使いたしました。
上記事情ご勘案の上、「考える会」としての株主提案に対しまして、株主の皆様のご賛同を賜りたく、どうぞよろしくお願いいたします。
LINK > 「武田薬品の将来を考える会」ホームページ