中外製薬が創製して、現在、固形癌患者を対象として第I 相臨床試験を実施中のスイッチ抗体STA551 の前臨床試験結果が、Cancer Discovery 電子版に掲載された。Cancer Discovery 誌は、米国癌学会(AACR)が発行する科学誌で、癌領域における画期的な前臨床・臨床研究を報告する世界のトップジャーナルに位置付けられている。
本報告の主な内容は以下のとおりである。
(1) 固形癌組織中に高濃度に存在するとされるATP に依存的にCD137 に結合し、アゴニスト活性を発揮する抗CD137 agonist 抗体STA551 を創製したこと
(2) STA551 がATP 存在下においてCD137 に結合してT 細胞を活性化し、ATP 非存在下ではCD137 に結合せず活性化しないこと(in vitro)
(3) 複数の癌細胞株をそれぞれ移植した8 種類のマウスモデルの全てにおいて、STA551 が抗腫瘍効果を示したこと( in vivo)
(4) 従来の抗CD137アゴニスト 抗体では全身性に誘導される免疫反応が、STA551 では低減したこと(マウス)
(5) 動物を用いた毒性試験で、STA551 の忍容性が認められたこと
STA551は、中外製薬が開発したSwitch-Ig®を適用したスイッチ抗体である。腫瘍組織で高濃度に存在するとされているATP をスイッチ分子として認識することで活性化し、標的抗原のCD137 に結合する。現在固形癌を対象に第I 相臨床試験を実施している。