7 月29 日、エーザイ(株)(エーザイ)とBiogen Inc.(Biogen)は、2021 年7 月26~30 日にバーチャル形式で開催されたAlzheimer 病協会国際会議(Alzheimer's Association International Conference: AAIC)2021 において、FDA からBreakthrough Therapy の指定を受けた抗amyloid β(Aβ)protofibril 抗体lecanemab(開発コード: BAN2401)について、Alzheimer 病(AD)による軽度認知障害(MCI)および軽度認知症(総称して早期AD)を対象にした臨床第2b 相POC 試験後のOpen-Label Extension(OLE:非盲検継続投与)試験で18 カ月投与の臨床効果の予備解析結果を口頭発表した(#57780)。
1. lecanemab:
Sweden のBioArctic AB とエーザイの共同研究から得られた、可溶性Aβ 凝集体(protofibril)に対するヒト化mAb である。lecanemab は、AD を惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβ protofibril に選択的に結合して無毒化し、脳内からこれを除去することでAD の病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されている。lecanemab は、現在、第3 相試験(Clarity AD)が進行中で、2021 年3 月に1,795 人の早期AD 被験者登録を完了、2022 年9 月末迄に主要評価項目の取得を目指している。
2. 第2 相201 試験及びOLE
lecanemab は、可溶性Aβ 凝集体のprotofibril に優先的に結合するヒト化mAb である。早期AD に対する第2b 相POC 試験(201 試験, n=856)の18 カ月投与(コア試験)において、脳内Aβ 量の減少と臨床症状の進行抑制を示した。201 試験のコア試験終了後、9〜59 カ月の無投与期間(ギャップ期間、コア試験におけるlecanemab の最後の投与からOLE の投与開始迄の期間:平均24 カ月)後に、lecanemab 10mg/kg IV、Q2W 投与を評価するOLE が実施された(コア試験参加者から180 人が登録)。lecanemab 治療による臨床効果は、コア試験の主要評価項目のADCOMS の調整後平均変化によって評価された。また、CDR-SB 及びADAS-Cog でも評価された。ADCOMS は0.00~1.97 のスコアで評価され、スコアが高い方がより臨床症状の進行を示す。
3. 疾患修飾効果の可能性
第2 相201 試験OLE の投与開始時に早期AD の被験者は、コア試験におけるlecanemab 投与による用量依存的な臨床効果の差がギャップ期間中も維持され、コア試験でlecanemab 10 mg/kg IV 投与群は、placebo 投与群との臨床症状の差を維持したまま推移した。ギャップ期間(コア試験後追跡調査時とOLE 投与開始時の間)のADCOMS による調整後平均変化は、Q2W 投与で0.11(0.07~0.18)、QM 投与で0.10(0.12~0.22)、placebo 投与で0.09(0.19~0.28)の増加(臨床症状進行)であった。CDR-SB とADAS-Cog においても同様の結果が観察された。ギャップ期間中、コア試験期間におけるすべての投与群で、主要評価項目による臨床症状の進行は同程度で、lecanemab の潜在的な疾患修飾効果を示唆している。
4. 脳内amyloid と治療との関係の可能性
血漿中Aβ 42/40 比の低値は、脳内amyloid の上昇の指標と認識され、201 試験のサブセットとして評価され。血漿中Aβ 42/40 比は、lecanemabの投与群で、コア試験期およびOLE 期間中に増加し、ギャップ期間中に減少することから、血漿中Aβ 42/40 比とlecanemab の治療との関連を示している可能性がある。lecanemab 治療に関連する血漿中Aβ 42/40 比の増加は、コア試験とOLE における治療に関連する脳内amyloid の減少と逆相関した。(完)
(主な出典:https://investors.biogen.com/news-releases/news-release-details/late-breaking-aaic-presentation-explores-potential-clinical他)