9 月17 日、AstraZeneca が開発中のATR 阻害剤ceralasertib の進行悪性固形癌患者に対する第2 相試験(NCT03682289)の中間解析結果を2021 年欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2021)で発表した。
1. 背景:
chromatin 再構成因子ARID1A の欠損で、ATR(Ataxia Telangiectasia およびRad 3
関連) kinase への依存度が高まり、ATR 阻害は、ARID1A 欠損前臨床モデルでsynthetic lethaltyを誘発する。注)synthetic lethality とは、1 つの遺伝子変異(主に欠損)では癌細胞に致死性を示さないが、2 つ以上の経路が同時に欠損、または阻害されることにより細胞死が起きる現象を指す。ATR 阻害剤ceralasertib を単剤、またはoraparib と併用により、ARID1A 欠損および完全保有の固形癌をそれぞれ有する患者で評価した。ATR 阻害剤ceralasertib 単剤、またはoraparib と併用により、ARID1A 欠損および完全保有のそれぞれの固形癌患者を評価した。
2. 方法:
進行悪性固形癌患者を登録した。 ARID1A 欠損症は、免疫組織化学(IHC)染色により、その遺伝子産物BAF250a の腫瘍発現の欠失と定義した。2 つのCohort が評価された。Cohort 1 はARID1A 遺伝子欠損患者に対して、28 日周期の1〜14 日目にceralasertib 160 mg
経口(PO)1 日2 回投与(BID)による単剤療法で治療し、Cohort 2 で は、ARID1A-遺伝子完全保有患者に対して、ceralasertib 160 mg BID 1〜7 日目に投与し、oraparib 300 mg PO BID 1〜28 日目に投与する併用療法で治療した。主要評価項目は奏効率(ORR)で、目標発生率は10 人/Cohort であった。Stage 2 に進むには、1 人以上の奏効例を必要とした。
3. 結果:
スクリーニングされた患者のうち、腫瘍がARID1A に病原性突然変異を有していた患者は、28/42(67%)で、IHC によりBAF250a の発現を喪失していた。20 人の患者が登録された(10 人/Cohort)。前治療の回数の中央値は2(範囲;0~5)であった。
1) Cohort 1;
ORR は20%を示し、 2 人の完全奏効(CR)が観察され、両奏効例の奏効期間の持続は、それぞれ19.8 カ月以上及び14.7 カ月以上を継続し、CR は現在も持続してい。Cohort 1 では、さらに1 人の患者が病勢安定(SD)を示し、8.8 カ月間治療を継続し、全体として臨床的有効率(奏効または病勢安定が> 6 カ月)は30%を示した。
2) Cohort 2;
SD のbest response は10 人中4 人(40%)に観察された。奏効性はゼロであった。全体として、臨床試験の治療期間の中央値は1.4 カ月(範囲;0.9~ 19.8+)であった。ceralasertib 単剤で最も一般的なグレード3 以上の有害事象は、血小板減少症(20%)と好中球減少症(20%)であり、両症例とも一時的な投与の中断あるいは用量の減量で改善した。
4. 結論:
ARID1A 欠損固形癌においてceralasertib 単剤療法による抗腫瘍活性が観察され、持続的で継続的な2 人のCR が含まれる。(完)
(主な出典:https://oncologypro.esmo.org/meeting-resources/esmo-congress-2021/interim-results-from-a-phase-ii-study-of-the-atr-inhibitor-ceralasertib-in-arid1a-deficient-and-arid1a-intact-advanced-solid-tumor-malignancies他)