ファイザーは抗生物質を中心とする感染症治療薬の、米国市場を除く開発・販売権をアストラゼネカから獲得した。米国市場が除外されたのは、最も重要な製品であるZavicefta(一般名セフタジジム/アビバクタム)が米国では製品名AVYCAZとしてすでにアラガンが販売していることが背景にあるようだ。
AVYCAZはFDAのQIDP制度に基づいて2015年2月に加速承認されたものの、売上高は今年度(2016年)も1億ドル(100億円)に達しない模様である。今後の売り上げ拡大には、cUTI(複雑性尿路感染症)とcIAI(複雑性腹腔内感染症)に限定されている適応症が、HAP(院内感染症)などに拡大される必要がある。欧州では製品名Zaviceftaとして、cUTI、cIAIに加えてHAP、VAP(人工呼吸器関連感染症)など幅広い適応症で2016年6月に承認された。米国を除外してもピーク時売上が10億ドルに達する可能性は十分にある。
既存製品のメロペンはピークとなった2008年には9億ドル(900億円)を売り上げていた。住友製薬(現、大日本住友製薬)からの導入品だった。現在は特許満了にともない減少しているものの新興国市場を中心に2億ドル台で安定している。
参考:買収費用について
ファイザーが支払う16億ドルは、4月に解消したアラガン合併計画1600億ドル(16兆円)と比べると、その100分の1と極めて小規模である。先週発表されたMedivationの買収費用140億ドル、さらに5月に買収した炎症・免疫分野のベンチャー企業Anacor社52億ドルと合計した208億ドルがようやく8分の1を超える。アストラゼネカは2013年にブリストルマイヤーズから糖尿病領域の合弁事業を43億ドル(➜PARニュース)で買収しており、抗生物質の事業価値を糖尿病領域の5分の1程度と評価していたことになる。