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2021/07/06

SGLT-2阻害薬empagliflozinが EMPEROR-Preserved 試験で左室駆出率保持心不全患者の心血管死リスク軽減を確認

7 月6 日、Boehringer Ingelheim(BI)とEli Lilly(Lilly)は、第3 相EMPEROR-Preserved 試験が主要評価項目を達成したと発表した。

1. 発表概要

empagliflozin は2 型糖尿病合併の有無を問わない左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)患者において、心血管死または心不全による入院の複合評価のリスクを有意に低下させることが示された最初の治療薬となった。今回の結果とEMPEROR-Reduced 試験結果を併せると、empagliflozin は左室駆出率を問わない幅広い心不全に有効性を証明したことになる。安全性は、empagliflozin の既知の安全性プロファイルと概ね一貫していた。

2. 心不全の疫学

心不全は世界的に重大な問題となっている。世界における心不全の有病者数は 6,000 万人以上にのぼり、その半数が HFpEF 患者で、世界中で約3,000 万人にものぼる左室駆出率が保持された心不全患者が存在する。心不全は、入院の主な原因となる疾患であり、西欧諸国でも高齢化に伴い有病率が上昇しつつある。心不全患者の死亡リスクは、入院回数に応じて増加する。左室駆出率が保持された心不全患者では、左心室内に十分に血液を溜められないため、全身へ必要な量の血液を送り出すことができない。

3. EMPEROR 慢性心不全試験

慢性心不全の臨床試験プログラムは、2 型糖尿病合併または非合併の左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者または左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に、empagliflozin の1 日1 回投与(QD)による治療をplacebo と比較検討する以下の 2 本の第3 相、無作為化、二重盲検試験から構成されている。

1) EMPEROR-Reduced 試験(NCT03057977);左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)の成人患者3,730 人におけるempagliflozin の安全性・有効性を評価。主要評価項目は、確定心血管死または確定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間で、試験完了は2020 年。

2) EMPEROR-Preserved 試験(NCT03057951);左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)の成人患者5,988 人におけるempagliflozin の安全性と有効性を評価。主要評価項目は、判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間。試験完了は2021 年。EMPEROR-Preserved 試験では、empagliflozin 10 mg とplacebo を比較検討している。EMPEROR-Preserved 試験詳細な結果は本年8 月に欧州心臓病学会議(ESC)で発表予定。

4. 終了している第3 相EMPEROR-Reduced 試験

成人の左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者を対象に検討が行われ、empagliflozin は心血管死または心不全による入院からなる複合評価項目の相対リスクをplacebo と比べて有意に 25%低下することが明らかにされている。これらの試験結果は、HFrEF と HFpEF を含む幅広い心不全の患者におけるempagliflozinのベネフィットを示している。EMPEROR-Reduced 試験の結果に基づいて、成人の左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を適応とする承認申請が行われ、このほど欧州委員会の承認を取得した。米国では、HFrEF の成人患者の心血管死と心不全による入院のリスク低減を目的とする治療薬として、empagliflozin の効能追加の一変申請(sNDA)をFDA に提出した。審査結果は年内に得られる見通しである。 empagliflozin は現在、血糖コントロール不十分な成人 2 型糖尿病患者の治療薬として承認されており、欧州連合では、HFrEF 患者の治療薬としても承認されている。(完)

(主な出典:https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/breakthrough-results-jardiancer-empagliflozin-confirm-emperor他)