お知らせ

2021/09/02

FDA、細胞・組織・遺伝子治療諮問委員会にAAV による遺伝子治療の安全性の審議を要請

9 月2 日~3 日、FDA の組織・先端医療部(OTAT)は、細胞・組織・遺伝子治療諮問委員会(CTGTAC)に対して、AAV(adeno 随伴virus)をvector に使用している遺伝子治療の安全性について、報告されている重篤な有害事象としての肝毒性、血栓性微小血管症(TMA)、神経毒性の後根神経節、脳のMRI 所見などについて、AAV の関与の可能性、事前の予測や防止法など多角的な見解を求める機会を設定した。この2 日間にわたる同諮問委員会の開催は7 月26 日発行のFederal Register に予告されていた。

1. AAV 遺伝子治療安全性対策:

2017 年承認の網膜ジストロフィー治療薬voretigene neparvovec-rzy(LUXTURNA) と2019 年承認の脊髄性筋萎縮症治療薬onasemnogene abeparvovec-xioi (ZOLGENSMA)は何れもNovartis の製品である。審議結果の詳細は不明であるが、最終的には、現時点においては、前臨床データから、ヒトへの重篤な有害事象を予測、あるいは予防策を検討するには、マウスなど動物モデルに問題があり、現在までに集積されたデータでは推奨すべき動物モデルの選択は困難で限界があるとの見解を集約したとRAPS のDaily Newsletter、あるいはFierce Pharm が報じている。

2. FDA が関心を持つAAV 遺伝子治療のプロファイル:

FDA が諮問委員会に提示した質問あるいは議論の要望と質問事項の概要を以下に略記する。

1) 第1 日(9 月2 日) 

Session 1:vector 導入と発癌性のリスク
(1) AAV vector を介した発癌性のリスクの特徴づけと前臨床試験のモデルとデザインに対する推奨事項、および今後の治療患者の生涯、死後の評価を含むフォローアップの期間等。(2) AAV を介したvector genome の持続性、vector の導入と発癌リスクへの影響、治療患者の年齢、既存の肝臓の状態(B 型あるいはC 型肝炎virus 感染状態など)、高用量vector 等、AAV を介した発癌に関するベネフィットリスクの評価で考慮すべき事項。(3) 発癌のリスクの検討。臨床試験に含めるべき安全監視ツール、治療患者に対する長期フォローアップの期間、頻度、および方法に関する推奨事項。(4) vector のデザイン、導入法と発癌性、製造工程において生成するDNA 関連不純物を運ぶ可能性があるため、非vector DNA の潜在的な導入により発癌のリスクを評価するための研究方法の推奨方法。

Session 2:肝毒性  
(1) 肝毒性のリスクを特徴づけるための動物実験の限界について、動物種/疾患モデル、生後および死後の評価などの前臨床試験のデザインへの推奨事項。(2) AAV vector 投与前に、肝障害を発症している症例のリスクに基づいて、患者のスクリーニング法や分類法の必要性。既存の肝状態から重篤な肝障害のリスクを予測する可能性。(3) .全身投与のvector 投与量を決定するために、体重以外にどのような要因(例えば、疾患の重症度のレベル)を考慮する必要性。(4) .高用量のAAV vector を用いた臨床試験で観察された肝毒性のリスクを考慮して、被験者あたりの総vector ゲノム量に上限を設定すべきか、また、多くのAAV 製品にはかなりの量の空のキャプシドが含まれるため、キャプシドの総投与用量に上限を設定する必要性。

2) 第2 日(9 月3 日)

 Session 3::血栓性微小血管症(TMA)
(1) .AAV vector 投与後のTMA のリスクを高める可能性のある要因。(2) . AAV vector を介したTMA のリスクを予防または軽減するために、AAV vector 投与の前および/または後に実施できる対策に関する推奨事項。(3) 高用量のAAV vector を用いた臨床試験で観察されたTMA のリスクを考慮して、被験者あたりの総vector ゲノム量に上限を設定すべきか否か。多くのAAV 製品には大量の空のキャプシドが含まれているため、キャプシドの総投与用量に上限を設定する必要性。

Session 4:神経毒性における後根神経節(DRG)毒性 
(1) 公開されたデータに基づいて、ヒト以外の霊長類のDRG 毒性の症例とヒト被験者との関連性についての議論。DRG 毒性のさらなる特性評価に寄与する可能性のある、/疾患動物モデル、年齢、生涯および死後の評価、追跡期間、投与後などの前臨床試験のデザイン。(2) .定期的な神経学的検査に加えて、臨床試験におけるDRG 毒性のリスクを軽減するための方法。

Session 5:神経毒性における脳磁気共鳴画像法(MRI)の所見
(1) AAV vector の実質内投与後の神経毒性のリスクを特定し、さらに特徴づけるために、前臨床の生涯および死後の評価(行動および神経病理学的評価など)および追跡期間、投与後の推奨事項。中枢神経系の損傷のリスクを防止または軽減するために、vector 投与の前後に実施できる対策。(完)

(主な出典:https://www.fda.gov/media/151872/download 他)