お知らせ

2021/09/02

米国下院2 委員長、FDA 長官代理にAlzheimer 治療薬ADUHELMの承認審査の情報を要求

9 月2 日、米国下院エネルギー商業委員会Frank Pallone, Jr 委員長と下院監査政府改革委員会のCarolyn B. Maloney 委員長が、連名でFDA 長官代理Dr. Janet Woodcock 宛てに、BiogenのAlzheimer 病治療薬ADUHELM(aducanumab)の承認審査手順および加速承認の認可に関する情報の提出を求める書簡を9 月1 日付で送付したことを公表した。両委員長は、書簡の中で、ADUHELM の審査に関わるFDA の審査のプロセスに認められる明らかな異常な結論に懸念を抱いている」と述べている。

1. 両委員長の懸念: 

FDA への書簡は、去る7 月のBiogen へのADUHELM の承認情報提出要求の書館に続いて、FDA におけるADUHELM の承認プロセス、販売、および価格設定に関する両委員会が続けている調査の一部である。我々は、ADUHELM の承認審査を取り巻くFDA のプロセスに明らかな異常を懸念している。FDA は、ADUHELM の臨床上のベネフィットと加速承認経路の使用について、FDA のスタッフやFDA の末梢神経系および中枢神経系医薬品諮問委員会(PCNS 諮問委員会)のメンバーを含む専門家によって提起された懸念にもかかわらず、加速承認で認可したことである。また、医薬品の承認プロセス全体を通じて、FDA とBiogen の間で異常な調整が行われていたという報告にも懸念を示している。

2. amyloidβプラークの代替エンドポイントとしての適格性: 両委員長は、FDA とBiogenが、キャンセルされた臨床試験の事後解析から、薬剤が脳内のamyloid βプラークを正常に減少させることが示されたという主張に依存していることにも留意している。amyloid βプラークの減少とAlzheimer 病患者の認知機能低下の進行抑制との関連性は十分に確立されておらず、多くの専門家によって疑問視されている。ADUHELM の承認前は、FDA 自体は、amyloid βプラークの減少が臨床上のベネフィットをもたらす可能性のある代替エンドポイントであるとは考えておらず、薬剤の承認プロセスについて新たな追加の疑問を提起している。FDA の2021 年6 月7 日の、ADUHELM の加速承認を認可の発表に続いて、3 人のPCNS諮問委員会メンバーが抗議して辞任したことも注目している。

3. 医療・保険機関の対応:

それ以来、Cleveland Clinic 及びMount Sinai などの主要な医療センターは、ADUHELM を投与しないことを決定した。大規模な健康保険会社は、彼らの患者にADUHELM をカバーすることを拒否し、退役軍人省(VA)も、重大な有害事象のリスクと認知へのポジティブなインパクトの証拠の欠如からVA 米国国民医薬品集への追加収載をしなかった。

4. 将来への影響:

ADUHELM の承認は、Alzheimer 病の患者だけでなく、高齢者、連邦医療プログラム、Alzheimer 病やその他の疾病の治療薬の将来の研究、開発、承認にも広範囲にわたり影響を及ぼすことが懸念される。米国の人々がFDA と承認された薬の安全性と有効性に最大限の信頼を持ち続けることを保証し、将来の法律作成に情報を提供するために、ADUHELM を審査し承認したFDA のプロセスに関する詳細な情報が必要である。

5. Biogen とFDA スタッフとの関係: 

書簡の中で、両委員長は、医薬品の承認プロセス全体にわたるFDA とBiogen の間の非定型的な調整の報告について懸念を表明し、FDA とBiogen の間の相互作用は、医薬品開発中のスポンサーとFDA スタッフの関与に関するFDA独自のガイダンスに反している可能性があることを示している。7 月にFDA は、保健福祉省の監察総監室(HHS OIG)にFDA とBiogen の間の相互作用を調査するよう要求し、8 月にHHS OIG は、FDA と外部組織との相互作用とFDA の加速承認経路の実施方法を検討すると発表した。

6. FDA への要求:

両委員長は、透明性の向上のためのこれらの努力を称賛する一方で、明確な説明が今必要であり、アメリカ人、特にAlzheimer 病患者とその介護者は、OIG レポートが2023 年に完成する予定なので、それまで待つことは到底できないことも強調した。従って、両委員長は、FDA が2021 年9 月16 日までに以下を含む重要な情報を委員会に提出することを要求した。

1) ADUHELM が加速承認の基準を満たしているというFDA の決定を、PCNS 諮問委員会、FDA の生物統計局の内部専門家、および米国最大の医療センターと保険会社の一部の見解とどのように調整するか説明すること。ADUHELM の安全性と有効性に関するデータが不十分である。

2) FDA スタッフが関連する諮問委員会と意見の相違がある場合、および/または関連するFDA の専門家である審査官の間で、内部の意見に相違がある場合に、承認の決定を行うためのFDA のプロセスまたは関連ポリシー(ADUHELM の承認がこのプロセスから逸脱したかどうかに関する情報を含む)。

3) FDA がADUHELM の加速承認経路の使用の可能性について、庁内およびBiogen と最初に話し合った時期と、そのような話し合いへの参加者の詳細。

4) ADUHELM の承認に関係したFDA 職員とBiogen の間の相互作用に関する内部機関による調査または評価に関連する文書。

5) 臨床試験で評価された病期よりも幅広い効能を承認し、承認後にADUHELM のラベルの一変申請で効能の限定を承認するためのFDA の内部協議およびそのプロセスに関わる文書。

6) FDA とBiogen の代表者との間のすべての公式および非公式の会話と会議のリスト、および2018 年1 月以降のそれらの会話に関連するコミュニケーションを含むすべての文書、およびそのような会議がFDA のBest Practices に沿って記載されなかった理由の説明。

7) ADUHELM の承認書記載の加速承認の確認試験提出期限の設定について;FDA が最初にADUHELM の市販後第4 相試験についてBiogen と協議をした期日はいつか?市販後試験提出期限とした9 年間(2029 年8 月)のタイムラインはどのようにして合意されたのか、そして、深刻な疾病の治療法開発を目指す迅速プログラムの-医薬品(Subpart E)と生物薬品(Subpart H)に定められたFDA 独自のガイダンスを満たしているか?検証試験の最終プロトコルの提出が2022 年8 月で、迅速プログラムの方針に適合しておらず、臨床上のベネフィットを検証する確認試験を迅速に実施させるか?(完)

(主な出典:Chairs Pallone and Maloney Request Answers from FDA on the Approval Process for Alzheimer’s Drug Aduhelm | Democrats, Energy and Commerce Committee (house.gov)他)