お知らせ

2022/05/01

海外製薬産業ニュース:2022年4月

 初回承認された新薬4件の適応症は心筋症、片頭痛、濾胞性リンパ腫と過成長スペクトル、さらに追加承認3件も強直性脊椎炎、重症筋無力症と大型B細胞リンパ腫と多岐にわたった。疾患領域としてもオンコロジー 2件、希少病 2件のほか、自己免疫、循環代謝、中枢神経系と様々だった。心筋症はファイザーのビンダケルがトランスサイレチン心筋症で20億ドルを超えており、ブリストルマイヤーズ・スクイブのマバカムテンが取得した肥大型心筋症にはこれを上回る市場性が期待される。
 経口CGRP阻害薬の片頭痛治療薬はすでにアッヴィのQULIPTAが承認されているが、ファイザーによると急性治療と予防効能が同時に承認されるのは初めてとなる。抗CGRP抗体Aimovig(アムジェン/ノバルティス)とEmagality(リリー)の2021年売上高は 6億ドル前後で低迷している。経口剤の登場が市場を拡大すると期待される。
 新規の濾胞性リンパ腫治療薬として承認されたロシュのモスネツズマブは抗CD20抗体リツキサンの後継品となるがCD3も標的とする二重特異性抗体である。ロシュにとっては不発に終わったADCC活性のガザイバ(2021年4億ドル)に代わるライフサイクルマネジメントとして期待が大きい。ノバルティスの過成長スペクトル(PROS)治療薬ビジョイスは乳がん治療薬ピクレイ(PI3K阻害薬)と同成分のアルペリシブを新規の新薬として開発した。

 追加承認ではアッヴィのJAK阻害薬リンボックが前月に承認された潰瘍性大腸炎に続いて5番目となる強直性脊椎炎の適応症を取得した。発売3年目(2021年)に17億ドルに達した売上高はファイザーが25億ドルを売上げるゼルヤンツを大きく上回ると予想される。申請段階では、日本を含め各国で承認されているGSKの低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PHI)阻害薬ダプロデュスタットの米国申請、第一三共とアストラゼネカが共同開発するHER2標的ADC薬エンハーツの非小細胞肺がん効能追加が注目される。エンハーツは2019年に乳がん、2021年に胃がん(いずれもHER2陽性)に承認されている。

最終臨床段階では糖尿病市場で競合するノボノルディスクとリリーが異なるアプローチの新規治療薬で最終臨床段階に達している。ノボの週1回投与インスリン・アイコデックは第 3a 相試験 において一日一回投与のランタスよりも優れたHbA1c 減少を示した。GIP/GLP-1デュアル受容体作動薬としてリリーが開発中のチルゼパチドは肥満症成人を対象とした臨床試験において最大22.5%の体重減少を確認した。

その他の研究開発では先述したロシュのモスネツズマブと同様のCD3xCD20二重特異抗体を開発中のアッヴィが大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者を対象とした第1/2相試験で全奏効率(ORR)63%、奏功期間(DOR)中央値12か月との結果を発表した。アストラゼネカの核酸医薬AZD8233はP2b段階で高リスクの高コレステロール血症患者のLDLコレステロール値を73%低下させた。バイエルのファクターXIa(eleven a)阻害薬アサンデキシアンの心房細動における第2b相試験の安全性データを発表した。骨髄異形成症候群(MDS)と急性リンパ性白血病(AML)を対象とするギリアドの抗CD47抗体マグロリマブに対するFDAの臨床試験保留措置(Clinical Hold)が解除された。アッヴィの新規 BCL-2阻害薬ナビトクラクスは第2相試験で良好な抗線維症活性を示した。アムジェンのKRAS阻害薬ルマケラス(ソトラシブ)はKRAS g12c変異を有する進行性非小細胞肺がん患者において 2年全生存率 32.5%を達成した。リリーはRET阻害薬レテブモ(セルペルカチニブ)の進行性 RET融合陽性非小細胞肺がん(NSCLC)におけるに関する最新データを2欧州肺がん会議で発表した。

ビジネス案件および経営事項:ファイザーはライム病ワクチン候補 VLA15 の第2相小児データ、RSウイルス治療薬を開発中のリバイラルの買収統合、およびALK陽性進行肺がん第一選択治療でローブレナが無増悪生存期間を延長した3年間追跡データを発表した。ノバルティスは成長加速、またパイプライン強化、生産性向上を目的とする組織改革、およびノースカロライナ州でのゾルゲンスマ製造能力拡大を発表した。アストラゼネカはマサチューセッツ州ケンブリッジに戦略的研究開発センターとアレキシオン本社を建設する計画、抗体医薬エブシェルの 6カ月以上にわたる症候性COVID-19予防効果を発表した。バイエルはオンコロジー戦略事業部の開発部門トップに、米国メルクとGSKでオンコロジー開発リーダーを務めたフランクル女史を任命した。GSKは臨床段階のバイオベンチャー企業シエラ・オンコロジーを19億ドルで買収する契約を発表した。ギリアドのCAR-T細胞療法専門企業カイトの最新製造施設をFDAが承認した。バイオジェンは合弁企業の持ち分をサムスンに売却してバイオシミラーから撤退する。ベーリンガーインゲルハイムは馬のステム細胞療法を商業化した。