スイスのアクテリオンは97年にロシュから独立して世界初のエンドセリン受容体拮抗剤の開発に成功した。2000年発売の肺動脈高血圧症治療薬トラクリア(一般名=ボセンタン)は現在、世界で8万人以上に使用され、年間売上は15億スイスフラン(1630億円)。同社売上高の87%を占め、15年に予想される特許終了が懸念材料だった。後継品Opsumit(一般名=macitentan)がFDA承認を取得した翌日は株価が7%も上昇した。
エンドセリンは、現在はテキサス大学教授となっている柳沢正史先生を中心とする筑波大学グループが88年に発見した。「最強の血管収縮作用」を示す生体内物質として肺高血圧、心不全、腎不全といった致死的な病態との関連が世界的に注目され、20社以上が新薬開発に取り組んでいた。日本からのノーベル賞候補として注目された時期もあった。