2016/05/21

ノバルティスのエントレスト、承認取得後1 年以内で欧米の心不全ガイドラインでClassⅠ推奨

ノバルティスの新薬エントレストentresto(ネプリライシン阻害薬・sacubitrilとARB・バルサルタンの配合剤)について、米国心臓病学会(ACC)、米国心臓病協会(AHA)、米国心不全学会(HFSA)および欧州心臓病学会(ESC)が同時に発表した改訂版臨床診療ガイドラインにおいて、ENTRESTO(sacubitril/valsartan) (LCZ696)が最も強力な推奨を意味するClass I の推奨を得た。
米国では、ACE 阻害剤またはアンジオテンシン II 受容体拮抗剤(ARB)に替わり、エントレストが、β遮断剤およびアルドステロン 拮抗剤との併用で左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)の標準治療法とされた。
ガイドライン推奨の概要:
1) 軽度から中等度の症状のあるHFrEF 患者;ACE 阻害剤またはARB からエントレスト への切り替えを呼びかけている。
2) 米国ガイドライン;ACE 阻害剤またはARB に代わり、エントレスト をHFrEF の標準治療に推奨し、軽度~中等度の症状のある患者には、エントレスト への切り替えを呼びかけている。
3) 欧州心臓病学会(ESC)による改訂版ガイドライン;PARADIGM-HF 試験で検討した集団と同様の患者については、ACE 阻害剤またはARB をエントレスト に変更するよう推奨。
4) 両ガイドライン;エントレスト が患者の心血管系死または心不全による入院のリスクを有意に減少させるというベネフィットを強調している。

PARADIGM-HF 試験は、8,442 名のHFrEF 患者を対象に、エントレストの有効性と安全性をACE 阻害剤エナラプリルと比較検討した無作為化、二重盲検、第3 相試験。NYHA 心機能分類クラスII-IV の典型的なHFrEF患者を対象として、エントレスト がエナラプリルと比較して心血管死を15%以上抑制できるかを検討するようデザインされた。最適な治療が行われている患者に、エントレストまたはエナラプリルが上乗せ投与された。主要評価項目は、心血管系死及び心不全による入院からなる複合評価項目の初回発現までの時間で、心不全試験では過去最大規模の試験である。
心不全は、生命を脅かす消耗性の病態で、世界で6 千万人以上が罹患、65 歳以上の入院の主要原因になっている。患者の約半数がHFrEF で、左室駆出率が低下すると心臓が十分な力で収縮できず送り出す血液量が減少する。心不全は、医療経済学的にも大きな負担で、現在のコストは毎年1,080 億ドルに達する。

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