2019/04/10

JC virus による進行性多巣性白質脳症に対してペムブロリズマブ による初期臨床研究報告


4 月10 日発行のNew England Journal of Medicine 誌に、米国NIH 傘下の国立心肺血液研究所(NHLBI)の研究者を中心とするグループが、進行性多巣性白質脳症(PML:Progressive multifocal leukoencephalopathy)に対する抗PD-1 抗体キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)の治療効果を検討した初期臨床研究結果が報告された。
PMLは、ヒトpolyoma virus 属二重鎖環状 DNA virus である JC virus(JCV)による中枢神経感染症の1 つで、名称通り進行性の多巣性脱髄病変を生じる。これまでの研究で、PML 患者のCD4+およびCD8+リンパ球ではPD-1 発現が上昇しており、JCV 特異的CD8+細胞で特に高度に発現されていることが報告されている。
PD-1‐PD-L1 経路の発現は、JCV のクリアランスに関与している可能性があり、抗PD-1 抗体により特異的に抗ウイルス免疫活性を再活性化できる可能性があるとの仮説を実証すべく試験を開始した。
8 人のPML 患者を登録し、ペムブロリズマブ2 mg/kg を4~6 週に1 回投与した。被験者への投与は最低1 回あるいは3 回以下であった。ペムブロリズマブ は、8 人の被験者全員に対して末梢血中および脳脊髄液(CSF)中のリンパ球のPD-1発現を抑制した。5人の被験者で、CSF 中のJCV の減少、およびin vitro でのCD4 陽性およびCD8 陽性抗JCV 活性の増加を伴うPML の臨床的改善または病勢の安定化が観察された。