株主提案権行使に至る理由について
武田薬品の将来を考える会
代表 武田和久
非常事態宣言は解除されたものの、第2波第3波に備え、予断を許さない状況は今後も続くと予想されている今、私たちには、ウィルスと共生していく知恵と工夫がより求められています。そして企業も株主もまた、知恵と工夫、さらには大きな変革が求められています。
さて、「武田薬品の将来を考える会」は今回、ガバナンス強化に資すべく社外取締役の候補者を推薦し、株主提案権を行使することにいたしました。そこに至る理由につきまして、ご報告いたします。
先ずは、この代表的なグローバル製薬企業4社(ロシュ、ノバルティス、ファイザー、メルク)のCEO報酬の表をご覧ください
LINK > 株主提案権の行使
タケダのCEO報酬18億円は、メルクの30億円、ファイザーの20億円に次いで3位となっています。
最高額であるメルクのCEO報酬は、2014年から2015年にかけて倍増し、その後更に4億円増加しています。その背景には、2014年に発売した抗がん剤・キートルーダの好調があります。メルクは、2015年に9.9%だったROEを38%へと28ポイント改善し、5年間の配当成長は年率平均5.1%、TSR(株主総利回り)は75%。これによりフレイジャーCEOの手腕が高く評価され、取締役会は定年制度を一時停止し、CEOの続投を決定しています。
また、この5年間のTSRは、ロシュ(31%)、ノバルティス(31%)、ファイザー(46%)において、市場(S&P指標)の伸び率(57%)を下回ったことから、CEO報酬は減額となっています(ただし、ファイザーとノバルティスは、途中でCEOが交代、2019年は新しいCEOの報酬)。
ロシュは、全世界における血友病治療薬・ヘムライブラの好調に起因し、ROEを3.7%ポイント改善し(直近実績42.6%)、年率2.7%の配当成長を実現しました。しかし、株価上昇率が市場を下回ったことから、CEOの報酬は減額されています。
さて、タケダはどうでしょう。ウェバーCEOの報酬(18億円)はなんと、この4年間(2018年度まで)で倍増、2019年度には20億円とさらに増加し、2位のファイザーを超えるのではと予想されています。
ウェバーCEOは、経営の選択と集中と称して、ノンコア事業、優良資産などの多くを売却し、さらに国内を中心に多くの従業員を解雇することによって業績改善を図りました。しかし、現在タケダのROEは0.9%へと3.0ポイント低下し、配当成長率はゼロ、TSRはマイナス27%、タケダの株主は、シャイアー社買収案件の前後に、全体で2兆円の損害を被っているのです。このような経営者の報酬がなぜ、増加し続けるのでしょうか。欧米企業であれば、CEO報酬の返還と解任を要求されて然るべきことと思っています。
このような事態を招いている要因の一つは、経営者による自己利益の追求を監視するガバナンス(企業統治)が機能していないことにあります。
「考える会」では、タケダはグローバル化を急ぐ一方で、ガバナンス機能は世界水準に全く追い付いていないと判断し、ガバナンス強化に資すべく社外取締役の候補者を推薦し、株主提案権を行使することにしました。
上記事情ご勘案の上、「考える会」としての株主提案につきまして、株主の皆様のご賛同を賜りたく、ここにお願いする次第です。
何卒よろしくお願いいたします