2020/07/08

アストラゼネカ/メルク/MSD のリムパーザ、BRCA変異陽性転移性膵癌治療薬としてEC承認

アストラゼネカとメルク/MSD が共同開発中のfirst-in-class のPARP 阻害剤リムパーザ(一般名:オラパリブ)は、BRCA1および/またはBRCA2遺伝子変異などの相同組換え修復の欠損を有する細胞または腫瘍のDNA 損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬である。PARP 阻害はDNA 一本鎖切断に結合するPARP を捕捉し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA 二本鎖切断を起こして、癌細胞を死滅させる。リムパーザはDDR 経路に異常をきたした一連のPARP 依存性の腫瘍タイプについて臨床試験が進行中である。
EC が、生殖細胞系列BRCA 遺伝子変異陽性(gBRCAm)転移性膵癌患者の初回治療後の維持療法として製造販売承認を認可した。今回の承認は、The New England Journal of Medicine 誌(2019;381:317-27)に掲載された第3 相POLO 試験結果に基づくもので、5 月28 日に開催されたEMA のCHMP の5 月定例会議で採択された承認勧告に基づいた正式承認である。
第3相POLO試験において、リムパーザはgBRCAm 転移性膵癌患者の病勢進行または死亡に至るまでの期間をほぼ2 倍に延長し、その期間の中央値はプラゼボ群の3.8 カ月に対してリムパーザ群で7.4 カ月を達成した。なお、本試験におけるリムパーザの安全性および忍容性プロファイルはこれまでの試験と概ね一貫していた。今回のEC 承認は、初回化学療法レジメンにおいて、少なくとも16 週間の白金製剤ベースの化学療法で病勢進行が認められなかった生殖細胞系列BRCA1/2 遺伝子変異陽性の転移性膵腺癌患者に対するリムパーザによる維持療法を対象にしている。