2022/08/01

海外製薬産業ニュース(2022年 7月)

  FDA承認に関する記事は弊社が調査対象とする大手企業(およそ30社)では皆無であった。全体の記事数も 31件と少なく、前月の 65件から半減した。 7月は夏休みとなり、6月にはASCO(米国臨床がん学会)関連の発表が多かったことが影響している。しかし、承認申請段階では重要な発表が3件あった。ロシュの CD20xCD3二重特異性抗体モスネツズマブのBLAをFDAが受理し、PDUFA審査期限を12月末とした。欧州では先月承認されており、すべての非ホジキンリンパ腫が適応対象となる可能性がある。アストラゼネカが第一三共と提携するHER2標的ADC薬エンハーツはFDAがHER2低発現の転移性乳がんへの追加承認申請(sBLA)を受理し、第 3四半期(7-9月)中に承認される見通しとなった。エーザイが 5月にローリング申請を完了していた抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブは FDAが加速承認制度の下で優先審査とし、PDUFA審査期限を明年1月 6日に設定した。

 臨床試験段階ではサノフィの遺伝子組み換え血液凝固第 8因子製剤エファネソクトコグアルファが週 1回投与で週 3回投与の従来製品を上回る出血予防成績を示した。中外製薬・ロシュの二重特異性抗体薬ヘムライブラが急成長している血友病市場で武田薬品(旧シャイアー)のアディノベイトなどに残された第 8因子補充療法の市場が席巻される可能性がある。ヘムライブラと同様の第 9因子と第 10因子を標的とするノボノルディスクの二重特異性抗体製剤 Mim8がフェーズ1および2において月1回投与で好成績を得た。第 11因子阻害薬の開発に集中するバイエルはRNA干渉薬フェソメルセンと抗体薬オソシマブの進行性腎臓疾患に対するフェーズ 2b試験に成功した。低分子薬でバイエルの最大製品イグザレルト(第 10因子阻害薬)の後継品として開発中の第 11因子阻害薬アスンデキシアンは心房細動を対象とするフェーズ 2b試験を完了している。

 経営事項およびビジネス案件では、ロシュの取締役会および執行委員会が来年春にシュバンCEOが会長となり、診断薬事業トップのシネッカー氏がCEOに就任する予定を発表した。バーテックスは嚢胞性線維症治療薬トライカフタ(TRYKAFTA)が発売3年目で 57億ドル(7400億円)に達する大成功を収め、研究開発への再投資を積極的に拡大している。7月には1型糖尿病の細胞治療プロジェクトで幹細胞置換療法に特化するバイオベンチャーを買収、さらに肝臓疾患に対する遺伝子治療プロジェクトにおいて体内遺伝子編集プログラムでの提携を発表した。