2015/04/21

アッヴィのPARP阻害剤ベリパリブがイリノテカンとの併用でトリプルネガティブ乳癌に奏効

米国癌学会(AACR2015)において、アッヴィが開発中のPARP(poly ADP-ribose polymerase)阻害薬ベリパリブveliparibとイリノテカンの併用療法のトリプルネガティブ乳癌(TNBC)に対する第1相試験の結果が報告され、良好な忍容性が示された。また、24例中20例で治療効果が評価され、そのうち生殖細胞系BRCA遺伝子変異陽性(gBRCAm)のTNBC患者8例中7例(88%)でPRが認められた。カルボプラチンとの併用でトリプルネガティブ乳がん620症例を目標とするP3試験を昨年(2014年)1月に開始した(→per news)。今回、症例数は少ないが高い奏効率が認められたことは注目される。

PARPは1本鎖DNA損傷を修復する酵素である。PARP阻害薬は、主にPARP酵素活性を阻害してDNA修復を抑制する。一方、BRCA1/2は2本鎖DNA切断を修復する。BRCA1/2に遺伝子変異のある癌細胞では、PARP阻害によりDNA修復が抑制されるとBRCA1/2による修復ができないためアポトーシスが引き起こされる。BRCA1/2が正常な細胞は、PARPが阻害されても細胞死に至ることはないと考えられている昨年(2014年)12月にアストラゼネカのリンパルザ(Lynparza、一般名olaparib)がPARP阻害剤として初めて、卵巣がん治療薬として承認されている。

[参考] 乳がん治療薬市場は69億ドル(8200億円、2014年)を売上げるロシュのHER2阻害剤ハーセプチンの独占状態が続いている。TNBCは原発乳がんの15%程度と言われるがエストロゲン、プロゲステロンのホルモン感受性とHER2発現が陰性なのでハーセプチンの効力は期待できない。
ノバルティスのmTOR阻害剤アフィニトール(2012年7月効能追加)、ファイザーのCDK4/6阻害剤イブランス(2015年2月FDA承認)など新しいメカニズムの新薬に注目が集まっている。PARP阻害剤の乳がん適応ではサノフィはイニパリブ(iniparib)が先行していたが2013年6月に開発中止となった。

[リンク] 乳がん 新薬開 市場動向