3 月13 日、Eli Lilly & Co.(Lilly)は、本日、第2 相TRAILBLAZER-ALZ 試験結果を、3 月9~14 日にバーチャル形式で開催された第15 回国際アルツハイマー・パーキンソン病学会2021(AD/PD™ 2021)およびNEJM 誌で報告したと発表した。
1. donanemab:翻訳後の修飾によりN 末端がpyro glutamyl 化されたamyloid βに特異的に結合し、amyloid plaque を迅速かつ完全に消失させるように設計されたモノクローナル抗体。
2. TRAILBLAZER-ALZ 試験デザイン:本試験(NCT03367403)は、早期症候性AD 患者を対象にdonanemab の安全性、忍容性、及び有効性を評価する、無作為化、placebo 対照、二重盲検、多施設共同第2 相臨床試験である。この試験にはamyloid plaque 画像診断及びタウ画像診断を組み合わせた認知機能検査に基づいて選定された272 人の患者が参加した。この試験の主要評価項目は、ADAS-Cog13 とADCS-iADL の機能スケールを組み合わせた複合ツールである、iADRSのベースラインから76週までの変化量である。主な副次評価項目には、ADASCog13、ADCS-iADL、MMSE 及びCDR-SB スコアのベースラインから76 週までの変化量が含まれている。その他の副次評価項目として、脳amyloid 沈着量および脳内タウ蛋白蓄積量のベースラインから76 週までの変化を検討している。本剤の安全性、忍容性及び有効性は、現在実施中の無作為化、placebo 対照、二重盲検、多施設共同、第2 相臨床試験TRAILBLAZERALZ2 試験(NCT04437511)においても評価中である。
3. 試験結果概要:早期症候性アルツハイマー病(AD)患者を対象とした本試験でdonanemabが主要評価項目を達成し、placebo と比較して、認知機能と日常生活機能の複合評価尺度であるIntegrated Alzheimer's Disease Rating Scale(iADRS)で評価した機能低下の有意な抑制を示した最新結果の更なる詳細な内容である。副次解析の結果においても、donanemab は一貫して認知機能及び日常機能低下の抑制を示した。全ての副次評価項目 [ Clinical Dementia Rating Scale Sum of Boxes<CDR-SB>、Alzheimer's Disease Assessment Scale-Cognitive<ADAS-Cog13>,Alzheimer’s Disease Cooperative Study-instrumental Activities of Daily Living<ADCS-iADL>、Mini-Mental State Examination<MMSE> ]において20~40%の機能低下の抑制が示され、複数の時点でplacebo と比較して名目上の統計学的有意性が認められた。また、事前に規定した探索的解析から、donanemab はアルツハイマー病(AD)患者の主要な脳領域におけるタウの蓄積を抑制することが示された。具体的には、投与開始から76 週時において、donanemab 投与群ではplacebo 投与群と比較して、ベースラインと比較したiADRS スコアの低下の32%の抑制が認められ、統計学的有意差が示された。投与開始から9 カ月時点で、iADRS スコアの低下に有意差が認められた。また、donanemab 投与群の40%が治療開始から6 カ月の時点で、68%が18カ月の時点でamyloid 陰性を達成した。
4. 安全性:donanemab の安全性プロファイルは第1 相臨床試験で認められたデータと一致していた。donanemab 投与群では、26.7%にamyloid 関連画像異常―浮腫(ARIA-E)が発現した。症候性ARIA-E は6.1%であった。ARIA-E 症例の大半は、治療開始から12 週以内に発現した。donanemab 投与群で多いその他の有害事象は、微小出血(7.6%)や脳表hemosiderin 沈着(13.7%)といったamyloid 関連画像異常-出血(ARIA-H)、悪心(10.7%)、注入に伴う反応(IRR)(7.6%)などであった。重篤なIRR 又は過敏症がdonanemab 投与群の2.3%で発現した。donanemab 投与群では、30.5%が有害事象により治療を中断し、そのうち半数はARIA 関連事象によるものであった。被験薬投与を中断した患者であっても安全性情報の収集は継続可能としていた。