7 月29 日、RNAi 薬のリーディング企業Alnylam Pharmaceuticals, Inc.(Alnylam)と、独自の創薬開発技術基盤PDPS (Peptide Discovery Platform System)を活用したpeptide 創薬のリーディング企業ペプチドリーム(PeptiDream)(株)は、肝臓以外の組織へRNAi 治療薬を送達する複数のpeptide-siRNA 複合体の創製・開発に関する共同研究開発契約を締結したと発表した。
1. RNAi
RNAi(RNA 干渉)は、遺伝子発現抑制(silencing)という細胞内の自然のプロセスで、生物学と創薬において最も期待され急速に進歩している最先端領域の一つである。RNAiの発見は、“10 年に1 度の画期的な科学の前進”とされ、その功績に対して2006 年にはNobel生理学・医学賞が贈られている。RNAi 治療薬は、細胞内で生じるこの自然な生物学的プロセスを利用した新しい作用機序を持つ薬剤として誕生した。RNAi 作用機序は、Alnylam のRNAi 治療薬技術基盤であるsiRNA(低分子干渉RNA)が、疾患に関与するタンパク質をコードするmRNA の発現を抑制することで、そのタンパク質の産生を阻害する。RNAi 治療薬は、遺伝子疾患などの治療法を変える可能性が示唆されている新たなアプローチである。
2. 提携内容
本提携において、両社は低分子干渉RNA(small interfering RNA;siRNA)を様々な細胞や組織に選択的に送達するため、標的の細胞表面の受容体に特異的に結合するpeptideの同定および最適化を共同で実施する。本提携で、Alnylam が標的の受容体を複数選択し、PeptiDream がそれぞれの受容体に結合するpeptide の同定、最適化および合成を行う。Alnylamはpeptide-siRNA 複合体を合成し、in vitro 及び in vivo 試験を実施する。本提携で幅広い種類の組織でmRNA 転写物の異常と関連する疾患の新たな治療の創出につながる可能性がある。
3. 経済条件
本契約の締結に伴い、PeptiDream は、Alnylam から契約一時金および共同研究の実施期間において研究開発支援金を受領する。またPeptiDream は、今後の開発、承認および販売マイルストンの支払いとして、総額で最大約22 億$(約2,440 億円;1$=110.9 円として計算)を受け取る可能性がある。また、PeptiDream は製品化後の正味の売上高に応じて、1 桁台前半から中盤の比率でロイヤルティを受領する権利を有している。
4. PeptiDream 代表取締役社長Dr. Patrick C. Reid のコメント
「肝臓以外の様々な組織に弾頭を運ぶため、Alnylam が選択した受容体に対する当社のPDPS 技術を活用して新たなpeptideの特定を楽しみにしている。本提携は、peptide を様々な薬剤を疾患部位の細胞や組織に選択的に送達するためにpeptide-薬物複合体として活用するという当社の戦略を拡大するものである。今回の取り組みを通じて、様々な疾患に対する革新的なpeptide-siRNA 複合体が創製され、治療の選択肢が多く創出されることを期待している」と述べている。
5. Alnylam CSO Dr. Kevin Fitzgerald のコメント
「これまでRNAi 治療薬の肝臓への送達における課題を解決し、CNS や眼、肺組織への送達に関して前臨床で進捗を示してきた。今回、さらに全身の組織に対してsiRNA の送達を効率的に行う可能性を有する技術が加わった。我々は、様々な受容体に結合するpeptide の創製・最適化技術でPeptiDream との今回の共同研究契約締結を喜ばしく思っている。我々が肝臓への送達で先駆的に行ったGalNAc-ASGPR の組み合わせと同様に、肝臓以外の組織への送達への有効なpeptide-受容体の組み合わせを同定したい」と述べている。(完)
(主な出典:https://investors.alnylam.com/press-release?id=25896他)