2021/07/09

Biogen/エーザイが開発したADUHELMの承認に関する監察総監室調査

7 月9 日、FDA 長官代理Dr. Janet Woodcock が、FDA の上部組織の連邦保健福祉省(DHHS)の監査総監室総監代理(Acting Inspector General ) Ms. Christi A. Grimm 宛てに、Biogen が申請したアルツハイマー病(AD)治療薬ADUHELM(aducanumab)のFDA 承認に関して、独立組織として調査するように要請したと自身のブログに要請文書を公開した。

1. 背景

Biogen とエーザイが共同で、初期の軽症AD の進行抑制を評価項目として実施した2 本の同一のプロトコルからなる試験で、1 本は有効、他の1 本は無効のデータを基に、Biogen がaducanumab(ADUHELM)のBLA を提出した。2020 年11 月にFDA 諮問委員会にBLA の審議を要請、審議の結果、有効性の証明が不十分として承認に不賛成10 人、保留1人とほぼ全会一致に近い状態で承認すべきでないと結論した。しかし、FDA の神経薬審査部門は6 月7 日に、臨床効果ではなく代替評価項目として学会として完全に認知されていないバイオマーカーのamyloidβの低下のみを評価して、AD 病の治療という臨床試験の患者集団とは異なる極めて広い効能で承認し、しかも効果不十分さをカバーするために加速承認制度を適用させ、2030 年までに臨床上の有効性を確認する承認を認可した。このFDA の決定を受けて諮問委員会のメンバーが辞任、上院議員がBiden 大統領あてにFDA 長官代理の辞任要求が出されるなど混乱を生じている。市民団体のPublic Citizen もこの承認に抗議している。

2. FDA 一変申請承認

7 月7 日、FDA は、ADUHELM の効能に、治療は、臨床試験において治療開始の対象としたAD による軽症認知障害または軽症AD 患者において開始することと、臨床試験の患者集団に限定する一変申請を承認した。先ず効能の範囲を縮小した。

3. 監査総監室総監代理宛書簡内容概要

1)現在、一般の関心が高まり、疑念が高まっているADUHELM 承認プロセスの中の、Biogen とFDA 代表者間の相互関係について独立した調査を実施するよう要請する。周知のように、AD の治療薬としてADUHELM(aducanumab)のBiogen のBLA の審査手順に関して、大きな注目と論争が絶えることなく続いている。これには、審査過程の段階で、Biogen とFDA のスタッフ間に何らかの相互作用があったか否かが注目されている。そのため、これらの相互作用がFDA の承認審査の基本方針と手順に矛盾をしていないかどうかを判断するために、BLA 承認の決定に至るプロセス中で、Biogen とFDA の関係者の間に相互作用があったか否かを独立に審査し評価を要請する。

2) FDA の規制対象となる製品の年間消費量は、米国民が毎年消費する金額の約4 分の1(1$当り25¢)にあたる規制を担う当局として、FDAの意思決定は広範囲にわたることか、それらの決定の中に論争につながることが生ずることは避けられないことでもある。

3) aducanumab の審査に関与したCDER のスタッフとリーダーシップの完全さと偏りのない科学に基づく意思決定へのコミットメントには大きな自信を持っているが、公式の通信手段以外による可能性を含め、審査の過程でBiogen とFDA の関係者との間の接触に懸念が指摘され続けている。FDA は、科学的完全性、バイアスのないデータの審査、およびデータに基づく規制上の決定に専念している。貴署の審査にはFDA としては全面的に協力する。この問題に対する継続的な公益を考えると、この調査を可及的早期に実施していただければ非常に役立つと考えている。(完)

(主な出典:https://www.neurologylive.com/view/fda-commissioner-janet-woodcock-independent-review-interactions-biogen-aducanumab)