申請の根拠となったJAVELIN Merkel 200 試験は2014年7月から2015年9月の間に88例の被験者を、PD-L1発現あるいはMerkel細胞polyoma virus感染の有無に関わらず登録し、アベルマブを2週に1回10 mg/kg静脈内投与した。被験者フォローアップの中央値は10.4 カ月(IQR 8.6-13.1)、奏効率(ORR)は31.8%(95.9% CI 21.9-43.1)であった。
アベルマブは完全ヒト型抗PD-L1 IgG1モノクローナル抗体でFc領域を改変していないため、自然免疫系に作用することにより、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発することが特徴とされる。アベルマブの臨床開発プログラムJAVELINは転移性MCCの他に、乳がん、胃/胃食道接合部がん、頭頸部がん、ホジキンリンパ腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、腎細胞がん、尿路上皮がん、など15以上のがん種を対象としている。30本以上の臨床試験が行われ、登録患者数は3,000人を超えている。
(参考)
アベルマブの欧州申請(MAA)に対しては欧州医薬品庁(EMA)が10月31日付で審査を開始している。初回申請の適応症「転移性Merkel細胞癌(MCC)」は悪性度の高い希少皮膚がんであり、欧州の患者数は年間約2,500人。
PD-1阻害剤に対するFDAの初回承認は悪性黒色腫治療薬としてメルク(MSD)のキートルーダが2014年9月、BMSのオプジーボが2014年12月だった。ロシュはPD-1受容体ではなく、そのリガンドであるPD-L1に対する抗体を開発し、2016年5月に膀胱がん治療薬としてテセンテリクのFDA承認を取得した。
EMDセローノのアベルマブはロシュのテセンテリク(Tecentriq)と同様にPD-L1を標的とする抗体である。優先審査により通常10か月の審査期間は6カ月に短縮され、2017年6月に承認される見通しである。
Link 企業分析➜Pfizer、EMDセローノ 新薬開発➜皮膚がん ➜BTD/優先審査(羽石レポート)