2016/12/15

米国糖尿病学会が2017 年糖尿病治療用新ガイドラインを発表、新たにGLP-1とSGLT-2を推奨

 米国糖尿病学会(ADA)の2017 年版糖尿病治療用ガイドライン「2017 Standards of Medical Care in Diabetes」がOnline公開された。Diabetes Care 誌(January 01, 2017; 40-Supplement 1)に掲載される。
 今回のガイドラインは、「心理社会的ケア」、「体調の管理」、「肥満・栄養過多の患者の代謝手術」、および「低血糖を含む医療に関する改訂」に焦点をあてている。より精神面での健康管理と併存疾患への配慮するために糖尿病患者の、うつ病、不安症、食事障害などのスクリーニング法も組み込まれた。また、ライフサイクルマネジメントとして、座りがちな行動をとる場合には30分毎に休憩することを推奨し、睡眠の質が血糖管理に影響することから、患者の眠りのパターンに注意するよう勧告している。治療の選択肢として、以下が改訂された。

代謝手術(減量手術)
血糖管理が不十分でBMIが40kg/m2以上の患者では血糖値の水準にかかわらず適応
(アジア系アメリカ人の場合は37.5kg/m2)

高血圧症の2型糖尿病患者
アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、アンジオテンシン受容体拮抗剤(ARB)、サイアザイド系利尿剤、カルシウムチャンネル拮抗剤(CCB)の4種の一次療法を含めるよう治療薬の使用枠を拡大

インスリン製剤アルゴリズム
2型糖尿病患者に、より多くの選択肢を提供するよう勧告している。インスリン使用患者は個別にA1c目標値を達成するためのフローチャートを提示。

糖尿病と心血管系疾患に罹患している患者
脳卒中あるいは心筋梗塞(MI)を発症したことの有る患者をはじめ、急性冠症候群(ACS)、狭心症、あるいは末梢動脈性疾患(PAD)の患者には、新たにGLP-1受容体作動薬リラグルチド、およびSGLT-2阻害剤エンパグリフロジンの使用を検討するよう勧告。

(参考)
昨年(2016年)12月にリリーとベーリンガーが共同開発したSGLT-2阻害剤エンパグリフロジン(商品名Jardiance)による「心血管系死亡のリスク低下」をFDAが認定、効能追加として承認された。これが早速、新ガイドラインに反映されている。SGLT-2阻害剤で先行するヤンセンのInvokana(一般名カナグリフロジン、田辺三菱から導入)の売上高は2015年13億㌦(1300億円)に達したが2016年は10%の伸びにとどまっている。Jardiance(エンパグリフロジン)は2015年に発売され、実質初年度の2016年売上高は2億㌦(200億円)程度と見込まれる。ガイドラインに後押しされてビリオンダラー(10億㌦)のブロックバスターに成長する可能性は十分。

Link 企業分析➔リリー(Eli Lilly) 海外新薬➔糖尿病