12月上旬にオンライン開催された米国血液学会(ASH)では、CD3による細胞免疫を誘導しながら、BMCA(B細胞成熟抗原)やGPRC5D(Gタンパク質共役受容体クラス5メンバーD)などを標的とする二重特異性抗体の新薬が次々と登場した。ファイザーのpf---3135、ヤンセンのタルケタマブ、リジェネロンのREGN5458、アムジェンのAMG 701は、いずれも初期臨床試験の段階だが多発性骨髄腫(MM)で好成績をおさめている。ヤンセンはBCMAを標的とするCAR-T細胞療法 cilta-cel のフェーズ1b/2試験の好成績もASHで発表した。
本年(2020年)8月にMM治療薬として承認されたGSKのBLENREP(一般名:ベランタマブ)は二重特異性抗体ではなくADC(抗体薬物複合体)治療薬であるが、初めてのBCMA標的薬となった。ベランタマブの適応症は4剤以上の前治療歴がある場合(5L)に限定されているが、いずれはベランタマブも含めてBCMA標的の一次選択(1L)治療薬が出てくる可能性が高い。MM治療薬は2019年実績108億ドル(1兆1200億円)のレブラミド(ブリストルマイヤーズ・スクイブ)や発売後4年で30億ドル(3200億円)に達したダーザレックス(ヤンセン)など、市場性が大きいだけに開発段階から激しい競合が繰り広げられている。
(参考)タケダ薬品が2008年に買収したミレニアムの主力品ベルケイドはプロテアソーム阻害剤の多発性骨髄腫治療薬であった。ピーク時には導出先のヤンセンが1700億円、タケダ薬品が1600億円を売上げたが、特許終了にともない売上高は激減している。プロテアソーム阻害剤の後継品ニンラーロは経口剤となって2015年に発売されたが、2019年売上高は770億円にとどまっている。さらに一次療法への適応症拡大を目指した臨床試験が本年(2020年)9月に失敗しており、競合品の開発状況から判断すると、タケダ薬品が12月のR&D説明会で提示した1500億円の目標は不可能と映る。
12/07, PFE, BCMA, CD3, Bispec-Ab, Multiple myeloma
Pfizer reports positive clinical data for BCMA-CD3 bispecific antibody (pf-06863135) in multiple myeloma- ファイザーは多発性骨髄腫に対するBCMA-CD3二重特異性抗体(pf-06863135)の良好な臨床データを報告した。
12/05, JNJ, Bispec-mAb, Multiple myeloma, GPRC5D, CD3
Janssen Presents First Data from the Phase 1 Study of the GPRC5DxCD3 Bispecific Talquetamab in Patients with Relapsed or Refractory Multiple Myeloma- ヤンセンは再発・難治性の多発性骨髄腫患者におけるGPRC5DxCD3二重特異性抗体タルケタマブの第1相臨床試験の最初のデータを発表した。
- リジェネロンのBCMAxCD3二重特異性抗体(REGN5458) は多重治療歴の多発性骨髄腫患者におけるフェーズ1試験で強度かつ持続的な反応が確認された。
- アムジェンはBCMA標的の半減期延長BiTE抗体治療薬AMG 701について最初の臨床データを発表、多重治療歴・多発性骨髄腫患者を登録した最新の評価可能群において全奏効率(ORR)は83%となった。