2021/04/16

Adenoviral vector vaccine の血小板減少を伴う血栓形成の関連示唆の論文にJanssen の反応

4 月16 日、Nebraska 大学 医療センターDr. Miur らの研究チームが、4 月14 日にNEJM誌に、Ad26.COV2.S vaccine(Ad26)の接種後に発現した脳静脈洞血栓症(CVST)を含む重度の血小板減少症および播種性血管内凝固症候群の発症にVaccine vector に使用しているadenovirusとの関連性を示唆する論文に、vaccine メーカーJanssen の研究者のレスポンスを掲載した。

1. 背景:

Dr. Muir らによる症例報告は、SARS-CoV-2 に対するAd26(Johnson & Johnson/Janssen)の被接種者における重度の血小板減少症および播種性血管内凝固症候群に関連する脳静脈洞血栓症(CVST)を含む血栓症について報告している。

2. 臨床試験: 

Ad26 の臨床試験プログラムに参加した75,000 人以上(約50,000 人が能動vaccine 群)の中で、血小板減少症を伴うCVST の1 例がvaccine 接種群に発生した。最初の第3 相試験からこの症例の確認のために、プログラムを一時停止した。外部の臨床専門家と協議した後、明確な因果関係は確立されず、安全性監視委員会は試験再開に同意した。その後、当該vaccine 接種者は、症状発症時点で血小板第4 因子(PF4)に対する抗体を有していたことが判明した。これは、Dr. Muir らの報告症例と同様の所見である。

3. EUA 認可後の医薬品安全性監視(Pharmacovigilance)プログラム:

同プログラムの一環として、4 月14 日時点でJanssen の世界中でAd26 の予防接種を受けた720 万人以上の人々の安全性サーベイランスからvaccine 接種後7〜14 日に血小板減少症を伴う6 例のCVST の発症報告を受けている。4 月13 日、慎重を期すため、FDA とCDC は合同諮問委員会を開催し、米国におけるAd26 接種の一時停止を勧告した。状況を把握し、低血小板を伴うCVST の診断、治療、報告に関するガイダンスを医師に提供する。これらの症例の報告率は1,000,000 回のvaccine 接種あたり1 回未満である。現時点では、これらの事象とAd26.との因果関係の確立には証拠不十分である。 CVST は非常に稀な疾患であり、Ad26.接種者で報告された事象数は、公表されているバックグラウンド発生率の範囲内で発生している(100,000 人年あたり0.2〜1.57)。低血小板によるCVST 発生率は不明で、非常に低いと見なされている。

4. adenoviral vector vaccines の相違点:

Greinacher およびSchultzetal の最近の報告(何れも2021 年4 月9 日NEJM 公開)で、ChAdOx1nCoV-19Vaccine(ChAd)接種は、稀な血栓性血小板減少症につながる可能性があると結論付けた。ChAd とAd26 で使用されるvector とスパイク(S)プロテインインサートは大幅に異なっている。Ad26 はヒト由来adenovirus 26 を使用するが、ChAd はchimpanzee adenovirus を使用している。Ad26 はAd 種D に由来し、細胞受容体としてCD46 を使用するが、ChAd はAd 種E に由来し、Coxsackie およびadenovirus 受容体(CAR)や他の分子の細胞受容体を使用する。したがって、これら2 つのvector は異なる宿主細胞受容体を使用し、異なる系統発生的および生物学的特性を有している可能性がある。さらに、Ad26 導入遺伝子は、furin をノックアウトした結果として、S1 を放出しない膜結合SARS-CoV-2 S タンパク質(融合前立体構造を2 カ所のproline 置換によって安定化)をコードしており、ChAd がコードしている未修飾S タンパク質とは切断部位が異なる。従って、これら2 つのVaccine の生物学的効果は全く異なる効果をもたらす可能性がある。血小板減少性血栓形成の関係には更なる証拠が必要となる。(完)

(主な出典:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2106075 )