2021/04/14

J&JのCOVID-19ワクチン接種後の血栓性血小板減少症に関するNEJM誌の記事について

4 月14 日、Nebraska 大学 医療センターDr. Miur らの研究チームが、非複製のadenovirus をvector に使用しているChAdOx1 nCoV-19 Vaccine(Oxford–AstraZeneca)の接種後に発生が認められている血小板の減少を伴う脳静脈洞血栓症に関連して、同様のadenoviral vector を使用しているJohnson & Johnson/Janssen のAd26.COV2.S vaccine の接種後に発現した1 症例報告をNEJM 誌編集者宛てに提出し、血栓形成にadenovirus の関与の可能性を示唆した。

1. 背景:SARS-CoV-2 のスパイク(S)糖タンパク質をコードする組換えchimpanzee adenoviral vector ベースのV-19 Vaccine (Oxford–AstraZeneca)の接種後に、血栓症および血小板減少症が報告されている。筆者らは、SARS-CoV-2 スパイク糖タンパク質をコードする組換えadenovirus 26 型ベクターのAd26.COV2.S Vaccine を接種された患者における自己免疫性heparin 起因性血小板減少症に類似した重度の血小板減少症および播種性血管内凝固症候群に関連する広範な血栓症の1 症例についてのLetter 形式での報告である。

2. 症例:

重大な病歴の無い48 歳の白人女性が、3 日間にわたる倦怠感と腹痛のため、当救急部門に搬送された。別の施設での最初の診察で、軽度の貧血と重度の血小板減少症と診断された。追加の検査で、fibrinogen レベルが低く、活性化部分thromboplastin 時間の延長、およびd-Dimer のレベルの顕著な上昇が示され、播種性血管内凝固症候群の症状を示していた。

腹部と骨盤のCT は、広範な内臓静脈血栓症を示した。SARS-CoV-2 のPCR 検査は陰性であった。新たに発症した頭痛により頭部CT は、右横静脈洞および直静脈洞を含む脳静脈洞血栓症(CVST)を示した。 未分画 heparin 製剤の投与が開始されたが、この治療にもかかわらず、患者は、脳の磁気共鳴画像法および磁気共鳴静脈造影法で明らかな出血性脳卒中を伴う進行性血栓症を発症した。 CT 血管造影を繰り返すと、右肝静脈と脾静脈に新しい血栓が確認された。さらに調査したところ、患者は症状発現の14 日前にAd26.COV2.S Vaccine を接種していたことが判明した。latex 強化Immunoassay による血小板第4 因子(PF4) heparin に対する抗体のスクリーニングテストは陰性であった。ただし、PF4-polyanion に対する抗体は異常なレベルの高さで陽性であった。heparin はargatroban に切り替えられ、体重1 kg 当り1 gの免疫グロブリンを2 日間静脈内投与された。この治療後、5 日間で血小板数が30,000 から145,000 に増加したが、重症状態は変わらなかった。最近の研究で、Greinacher と共同研究者は、vaccine 誘発性免疫血栓性血小板減少症が、PF4 を認識してFcγ受容体を介して血小板を活性化するIgG 抗体との関連を発見した。静脈内免疫globulin による血小板活性化の阻害は、自己免疫性heparin 起因性血小板減少症の治療におけるその有効性と平行していた。

3. Ad26.COV2.S Vaccine の臨床評価:

臨床試験で、25 歳の男性がvaccine 接種19 日後に症候性横静脈洞血栓症を発症したことが判明したことは注目される。症例の評価と専門家の意見は、この事象はvaccine とは無関係としたが、 この所見は再評価が必要になる場合がある。

4. 結論:

mRNAベースのPfizer–BioNTech およびModerna Vaccine とは異なり、ChAdOx1nCov-19 およびAd26.COV2.S Vaccine は非複製 adenoviral vector ベースのDNA Vaccine である。我々の症例は、Vaccine 誘発性免疫性血小板減少症の稀な発生がadenoviral vaccine に関連している可能性があることを示唆している。(完)

(主な出典:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2105869)