5月12日、中国系バイオ医薬品企業のLegend Biotech Corp.(Legend)は、Janssen Biotech, Inc. (Janssen)と共同開発中の抗BCMA CAR T細胞療法ciltacabtagene autoleucel (cilta-cel) について、ASCO 2021での発表が受理されたと発表した(Abstract #8013; Poster Discussion Session)。
1. 背景:
cilta-cel は、高い親和性を有する2つの抗BCMA 結合単一ドメインを有する抗体を発現する CAR T 細胞療法。複数のコホートからなる第2相CARTITUDE-2試験(NCT04133636) は、外来患者を含め、多様な臨床症状を示す多発性骨髄腫(MM)患者のcilta-celの安全性と有効性を評価する試験である。今回コホートAの最初の試験結果を紹介する。
2. 方法:
コホートAの患者は、proteasome阻害剤(PI)、および免疫調節薬(IMiD)を含む1 ~3回の前治療(LOT)後に進行し、lenalidomide難治性、抗BCMA標的薬の治療歴の無いMM患者に対して、cilta-celの単回注入(目標用量: 0.75±106 CAR+生存T細胞/kg)は、リンパ球枯渇療法 [毎日cyclophosphamide (300 mg/m2) およびfuldarabine (30 mg/m2) 3日間] 開始後 5~7日目に投与された。 主要評価項目の微小残存病変(MRD)は10-5で陰性とした。副次評価項目は、寛解率(IMWG)と安全性(CTCAEによるCRSとICANS、ASTCT )であった。
3. 結果:
1) 有効性;2021 年 2 月データカットオフ時点(追跡期間の中央値: 5.8カ月;範囲: 2.5–9.8カ月)で、20人[男性 65%, 年齢中央値60歳(38–75)]がcilta-cel を投与された。1人の患者が外来で治療を受けた。患者の、LOTの中央値は 2回(範囲1–3)であった。 12人の患者のLOTが3回以下、8人が3回を経験していた。全ての患者は、PI、IMiD、およびdexamethasoneに暴露され、95% がアルキル化剤の投与を受け、65%がdaratumumab を投与されていた。大多数の患者(95%)は、直近のLOT に対して難治性で、 40% の患者が3剤に難治性を示していた。全体の寛解率(ORR)は 95% (95% CI: 75-100)、75% (95% CI: 51-91) が厳格な完全寛解(CR)/完全寛解(CR)を達成、85% (95% CI: 62-97) が非常に良好な部分寛解(≧VGPR)以上を達成した。最初の寛解達成までの期間の中央値は 1.0カ月(0.7–3.3) 、最良の寛解達成までの期間の中央値は1.9カ月(0.9–5.1)、寛解期間の中央値は未達である。データカットオフ時点で 微小残存病変(MRD)の評価可能な患者(n = 4)が10-5 で陰性であった。
2) 安全性
≧20% の血液学的有害事象(AEs)は、好中球減少((95%; GR 3/4: 90%)、血小板減少(80%; GR 3/4: 35%)、貧血(65%; GR3/4: 40%)、リンパ球減少(60 %; GR3/4: 55%)、および白血球減少(55%; 全GR 3/4)。 Cytokine 放出症候群(CRS)は 85%に発生し、10% がGR 3/4であった。CRS 発症までの期間の中央値は7日(5~9日)、症状発症期間の中央値は 3.5 日(2~11日)であった。神経毒性は、患者の20%(全てGR 1/2)に発生、3人が免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS) (1人がGR 1; 2人がGR 2)を発症した。発症までの期間の中央値は8日(7~11日)、発症期間の中央値は2日(1~2日)であった。1人にGR 2の顔面麻痺が発症し、発症までの期間は29日、発症期間は51日であった。COVID-19により1人が死亡した(試験担当医師は、治療に関連と診断)。外来患者の安全性プロファイルは管理可能であった。
4. 結論:
cilta-cel 1回注入により、1~3回LOTを経験したMM 患者において管理可能な安全性プロファイルを伴う早期の、かつ強力な寛解を達成した。更新された有効性と安全性の知見は外来患者にも適用可能なことを示した。(完)
(主な出典:https://investors.legendbiotech.com/news-releases/news-release-details/legend-biotech-reports-new-and-updated-data-bcma-car-t-program