Roche’s fixed-dose subcutaneous combination of Perjeta and Herceptin showed non-inferiority when compared to intravenous formulations for people with HER2-positive breast cancer
ロシュはいずれも自社開発のHER2阻害薬であるパージェタとハーセプチンの合剤を皮下注射製剤として、従来の静脈注射製剤との同等性を確認した。HER2陽性の早期乳がん患者を対象に化学療法(静脈注射)との併用による術前補助療法(ネオアジュバント)および術後補助療法(アジュバント)として投与した。これまで150分間を要した投与時間は5分に短縮された。同等性は一定の投与間隔におけるパージェタの最低血中濃度で比較した。
パージェタとハーセプチンの併用は100か国以上で承認されており、病理学的完全緩解率(pCR)をハーセプチン単独投与と化学療法による術前補助療法の倍近くへと改善している。さらに早期乳がんにおける術後補助療法では再発、侵襲性病変及び死亡のリスクを有意に減少している。転移性乳がん患者の一次治療の成績は従来治療を大きく上回り、生存期間を改善している。
(解説)
ハーセプチンは1998年に初めての抗体医薬の分子標的抗がん剤としてHER2陽性転移性乳がんを適応症に承認された。特許期間が終了し、バイオシミラー製品が欧州では一昨年(2017年)に承認され、米国でも今年(2019年)に入って3月にファイザー、6月にアムジェンが承認を取得した。ハーセプチンの売上高は2018年71億円㌦で
パージェタはHER2受容体の二量化阻害剤であり、抗HER2抗体のハーセプチンとは異なる作用によってHER2パスウェイを阻害する。2012年にHER2陽性・転移性乳がんを適応症として承認された。翌年(2013年)に術前補助療法として、2017年には術後補助療法としての追加適応症が承認された。
ロシュのHER2阻害製品ラインにはもう一つ、化学療法剤を結合させた抗体薬物複合体(ADC)のカドサイラがある。カドサイラは2013年に転移性乳がんに承認され、本年(2019年)5月に早期乳がんの術後補助療法が追加承認された。カドサイラの売上高(2018年995億円)はパージェタ2800億円との比較で見劣りする。ハーセプチンの特許が終了し、「パージェタ・ハーセプチン合剤皮下注」は製品ライフサイクル管理(LCM)戦略としてカドサイラ以上に重要になる。
ハーセプチンの売上高は2017年(71憶㌦)がピークとなったが昨年(2018年)もほぼ横ばい、グローバル医薬品ランキングも横ばいの4位だった。これまでロシュが独占してきた100憶㌦(1兆円)のHER2阻害薬市場では、バイオシミラーの参入だけでなく、ハーセプチンをADC化してカドサイラを上回る効果が期待される第一三共がのDS-8201にも注目が集まっている。昨年(2018年)9月にメルクのPD-1阻害薬キートルーダとの併用についての共同開発が発表され、本年(2019年)3月にはアストラゼネカとの共同開発も決定されている。