2021/04/26

FDA の加速承認制度の強化策、不確実性/アクセス/革新性/薬価に関する政策改革と影響分析

4 月26 日、米国の薬価と対費用効果を評価している民間の非営利組織ICER(Institute for Clinical and Economic Review)は、Memorial Sloan Kettering 癌センター Drug Pricing Lab の研究者と協力して、「FDA の加速承認制度の強化:潜在的な政策改革とその不確実性、アクセス、革新、および薬価への影響分析」と題した、新たな白書を発表した。白書は、患者グループ、元規制当局関係者、保健支払者、ライフサイエンス企業の専門家からの意見に基づいて、不確実性、アクセス、革新性、薬価のバランスに対処するさまざまな改革の選択肢の潜在的な影響を分析した報告書である。

1. 白書の作成目的:

この白書は、加速承認経路(AAP)に内在する機会と課題の双方をより明確に理解し、AAP を前進させるために、政策立案者がAAP を強化するために検討する可能性のあるさまざまな改革の選択肢について、潜在的なリスクとベネフィットに関する分析結果を提示することを目的としている。 

2. ICER President Dr. Steven D. Pearson のコメント:

「1992 年以来、FDA の加速承認プログラムは、従来の承認手順よりも早期に、重要な新しい治療法を患者にもたらしてきた。本制度による成功は数多く、患者全体にとってのメリットはかなりのものである。しかし、課題として、FDA のAAP を指定する証拠の基準の適用に一貫性を欠いており、現在、実施されているインセンティブと手順が妥当な時間枠で高品質の確認試験を完了するには不十分であるとの懸念や批判が浮上していることも事実である。さまざまな視点にたって、患者がこれらの薬に公正にアクセスできない可能性があるという懸念も提起されており、その一例として、この手順で承認されたほとんどの新薬の有効性は、不確実でありながら、高薬価で上市されている点である。そのため、今回の白書を基に、ほぼ30 年間の経験と、AAP の現状、そしてそれを強化するために何ができるか、何が必要かを検討する良い機会である。潜在的なマイナス面がなければ、政策改革の選択肢は存在しない。白書の目標は、主要な政策の選択肢の潜在的なメリットとリスクを示すことにある。」と述べている。

3. 想定される複数の政策改革:

1) 代替評価項目(surrogate endpoints)の選択を厳格化する。2) 一貫性と証拠の標準を高めるための標準化されたAAP テンプレートを開発する。3) (承認申請に当たって)より多くの無作為化比較試験を要求する。4) AAP 療法のラベルに新しい「アラート」を作成する。5) 経済的インセンティブを確認試験の完了に結び付ける。6) 事前に決定された期日迄に確認証拠が提出されない場合、継続的な販売承認条件を変更。7) 安全性は実証されているが、患者の生活の改善を証明できない治療法に対して、公的または民間の保険の適用範囲を要求せずに、「安全性のみ」の承認とする(販売不可能か)。8) 完全に承認されるまで、強制的な連邦リベートレベルを引き上げる。9) 確認証拠が認可されるまで、限界費用で価格設定するか、発売時に完全な市場価格設定を許可し、確認試験が妥当な時間枠内に完了しない場合には限界費用の価格設定に戻す。AAP 療法の支払い要求は、契約に基づいてアウトカムに基づくこと。

4. 参考資料:同白書記載のデータ

1) 加速承認の確認試験により完全承認(標準承認)への移行状況(1992 年~2016 年)


2) 代替評価項目の評価基準

3) 2020 年加速承認品目の4 週間分の薬価:最低でも$13,364、最高は$54,144

(完)