2021/09/27

早期Alzheimer病に対する抗amyloidβprotofibril抗体lecanemab BLAのRolling申請開始

9月27日、エーザイとBiogen Inc.(Biogen)は、抗amyloid β(Aβ) protofibril抗体lecanemab (BAN2401)について、エーザイがFDAに対し、早期Alzheimer病(早期AD)治療薬として、BLAのRolling 申請のプロセスを開始したと発表した。

1. lecanemab( BAN2401):

BioArctic AB(Sweden)とエーザイの共同研究から得られた、可溶性amyloidβ(Aβ)凝集体(protofibril)に対するヒト化mAbである。lecanemabは、ADを惹起させる因子の一つと考えられている、神経毒性を有するAβprotofibrilに選択的に結合して無毒化し、脳内から除去することでADの病態進行を抑制する疾患修飾作用が示唆されている。早期ADを対象にした大規模第2相201試験においては、事前に規定した18カ月投与における解析の結果は、脳内Aβ蓄積量の有意な減少(p<0.0001)とADCOMS*による臨床症状の悪化抑制(p<0.05)を示した。なお、12カ月投与時における主要評価項目は達成しなかった。201試験(コア期間)の後、投与を休止していたギャップ期間(平均24カ月)を経て、lecanemab 10 mg/kg 2週に1回投与(Q2W)の安全性と有効性を評価するOpen-Label Extension試験が進行中。

エーザイは、本抗体について、2007年12月にBioArcticとのライセンス契約により、全世界におけるADを対象とした研究・開発・製造・販売に関する権利を取得している。2014年3月に、エーザイとBiogenはlecanemabに関する共同開発・共同販促に関する契約を締結し、2017年10月に契約内容の一部を変更した。現在、第2相201試験のOpen-Label Extension試験および早期ADを対象に検証用の一本の第3相Clarity AD試験を実施中。また、2020年7月、ADのより早期ステージにあたる脳内Aβ蓄積が境界域レベル及び陽性レベルのプレクリニカルADを対象にした第3相AHEAD 3-45試験を米国のADおよび関連する認知症の学術的臨床試験のための基盤を提供するAlzheimer's Clinical Trials Consortium(ACTC)と共同で開始した。AHEAD 3-45試験はNIH、National Institute of Agingから資金提供を受けている。

2. lecanemab(BAN2401)のBLA提出:主として、Aβの脳内蓄積が確認された早期ADを対象にした第2b相201試験による臨床症状、バイオマーカーおよび安全性データに基づいて、加速承認制度を活用する。本試験結果は、lecanemabの高い脳内Aβ除去作用と複数の臨床評価項目で一貫した臨床症状の悪化抑制を示し、その脳内Aβ除去の程度と臨床評価項目の効果との相関は、Aβが臨床的有用性を予測する代替マーカーになり得ることを示唆している。ADは進行性の深刻な疾患であるが、治療選択肢が限られている。エーザイは、FDAとの協議の結果、加速承認制度を活用し、早期AD当事者とその家族、医療関係者に新たな治療の選択肢の提供をめざす。lecanemabは、2021年6月にBreakthrough Therapyの指定を受けた。

本BLAは、主に、Aβの脳内蓄積が確認されたADによる軽度認知障害(MCI)および軽度AD(総称して早期AD)の被験者856人を対象に、lecanemab投与による脳内Aβ量の減少と臨床症状の進行抑制に対する効果を評価するPOCを目的とした第2b相201コア試験結果に基づいている。本試験結果は2021年4月に査読付き学術誌に発表され、18カ月のlecanemab 10 mg/kg Q2W投与により、PET画像にて測定した脳内Aβ蓄積量( SUVr)をベースライン時の平均1.37 Unitから0.306 Unitに減少させ、被験者の80%以上は読影診断により脳内amyloid陰性化が確認された。(完)

(主な出典:https://www.eisai.co.jp/news/2021/news202177.html他)