2017/01/09

Kite PharmaがCAR-T療法の日本における開発・商業化で第一三共と提携

 Kite Pharma, Inc.(カイト社)は、開発中のCAR T(キメラ抗原受容体T細胞)療法KTE-C19 (axicabtagene ciloleucel)の日本における開発並びに商業化に関して、第一三共と戦略的提携契約を締結したと発表した。
 CAR T療法は患者のT細胞を採取し、遺伝子操作により、B 細胞リンパ腫および白血病細胞表層に発現しているCD19 抗原を標的とするキメラ抗原(CAR)受容体を発現させ、癌細胞を死滅させる治療法である。奏効率(ORR)90%以上、完全寛解率(CR)40~50%を示し、現段階で最強の癌免疫療法と言われている。しかし、主作用が暴走すると重篤なサイトカイン放出症候群を引き起こすため、これを抑える「安全装置」(ブレーキ)の開発が成功のカギとされている。(注)
 カイト社は、2015 年12 月にFDA からBreakthrough Therapy、2016 年6 月にEMA からPRIME スキームの指定をそれぞれ受けた。 2016 年12 月4 日にFDA にローリング申請によるBLA の提出を開始、2017 年第1 四半期末迄に完了すると発表した。申請効能は「自己幹細胞移植が不適な再発・難治性進行性B 細胞NHL 患者の治療」とし、化学療法が無効なびまん性大細胞型B 細胞性リンパ腫(DLBCL)、形質転換濾胞性リンパ腫(TFL)、原発性縦隔大細胞型B 細胞性リンパ腫のサブタイプからなるNHL 患者が含まれている。
 第一三共は日本におけるKTE-C19 の開発ならびに商業化を行う。カイト社は契約の一環として第一三共に技術供与を行い、更に第一三共はKITE-718 を含め、カイト社が今後3年以内に米国にINDを提出するその他の開発候補品のライセンス権利を有している。

(参考:注)
強力なキメラ抗原受容体T 細胞(CAR-T 細胞)療法には長所と短所があることから、安全スイッチの開発の必要性が論じられている。承認されれば超大型製品に成長すると期待されるだけに、安全スイッチを組み入れた開発アプローチに移行する企業も出てきた。そのため、今後3~4年以内の承認は期待できず、固形癌への承認は更にその先になるとアナリストは予測している。アステラス製薬は米国子会社が開発したCAR T療法をBellicum社に導出しており、日本国内では取り組まない方針と思われる。

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